MMCXと2pinイヤホンのBluetoothワイヤレス化
MMCXや2pinといったケーブル交換規格をもったイヤホンのBluetoothワイヤレス化が始まったのは、2017年あたりからでしょうか。当時は3社ほどだったメーカーもすでに10社を超え、LDACやaptX HDといったハイレゾ相当のコーデックに対応したケーブルも増えてきています。(下記記事に製品をまとめています)
そんなBluetooth化の流れの中で、ついに訪れたのが「完全ワイヤレスイヤホン化」です。
待望の完全ワイヤレスイヤホン“アダプタ”が登場!
2019年1月、The NAMM Show 2019にて初展示された完全ワイヤレスイヤホンが「FOSTEX TM2」です。
パーツの組み替えによりMMCXでも2pinでも完全ワイヤレスイヤホンに換装できるというフレキシビリティーの高さから注目を集めました。
当初2019年3月発売予定でしたが、5月31日に発売されました。発売開始直後から売り切れが相次ぎ、品薄状態となりました。運良く発売日に購入することができたので、レビューしていきます。
※バッテリー内蔵式ケースを採用し、ケースでの充電が可能になった「TM2C」が2021年6月10日に発売されました。購入の際には型番にお気をつけください。イヤホン自体に変更はないそうです。
完全ワイヤレスイヤホン FOSTEX TM2をレビュー
ブラックなパッケージに、ブランドのキーカラーであるオレンジが印象的なパッケージです。
蓋身式のパッケージになっていて、内箱がオレンジになっています。めちゃくちゃ気合いが入っていますね。
今回購入したのは、初期ロットだったので「初回限定特典」として“FitEar 2pin”ケーブルが添付されています。
別売りで5,000円を超える高価なアダプターなので、FitEarのイヤホンを持っている人にしてみたら、めちゃくちゃお買い得な特典です。
パッケージの蓋を開けてみましょう。オレンジの内箱にFOSTEXロゴを持つケースが収まっています。シンプルでかっこいいー。
TM2以外の付属品としては、充電用USBケーブル、イヤーピース(S/M/L)、PUレザーポーチ、Fostexロゴステッカー、取扱説明書兼保証書となっています。(イヤーピースが写真に写っていませんが、並べ忘れただけです……)
それでは、FOSTEX TM2を詳しく見ていきましょう。
バッテリー非搭載、FOSTEX TM2用の巨大な充電ケース!
FOSTEX TM2が入った充電用クレードルケースになります。完全ワイヤレスイヤホンのケースとしては規格外の大きさ……これはジャケットのポケットには入らないな。
iPhoneの中で最大の大きさを誇るiPhone XS Maxと比べても、この巨体です。
他の完全ワイヤレスイヤホンと比べてみましょう。AirPods(写真左上)は言うに及ばず、Anker Soundcore Liberty Neo(写真左下)をはるかに超え、大きいとされるBOSE SoundSport Free(写真右下)と比較しても、かなりの大きさです。
実は、このクレードルケースはバッテリーを搭載していません。ただの充電台だったりします(USBケーブルとUSB-ACアダプタを繋がないと充電されません)。このため、大きさの割にかなり軽く、150gを切っています。軽量のスマホくらいですね。
底面を見ると、各種技術認証情報が記載されています。
ケースの四隅には滑り止めが付いていて、持ち運ぶのではなく、設置しておくことが前提の作りだということが分かります。
付属品にPUレザーポーチがあったので、ケースが入るのでは?と思われたかもしれませんが、これはTM2そのものを持ち運ぶためのもの。比べてみると幅が全く足りません。
側面には、充電用のMicroUSBポートがあります。残念ながらUSB-Cではありません。
充電クレードルケースにバッテリーを搭載していないことを残念に思われるかもしれませんが、他社の完全ワイヤレスイヤホンと異なり、TM2は本体だけで最大10時間の連続再生時間があります。
例えば1日2時間使ったとして、平日は毎日使えますし、週末に充電するだけでいいことになります。あまり心配することはないでしょう!
それでは、いよいよTM2本体を見ていきましょう。
FOSTEX TM2の合体機構をチェック
充電用クレードルケースを開けてみます。ラッチなどはないので、押し上げれば軽く開きます。
さて、いよいよTM2とご対面です。イヤホンが収まる部分に大きくスペースがあります。ここが大きく開いていることで、他の大きいイヤホンに換装してもケースに収まるというわけです。
初期状態で充電クレードルケースから取り外すと、ペアリングモードが始まります。スマホのBluetoothメニューから「Fostex TM2 Left」または「Fostex TM2 Right」を選択しましょう。左右の連結処理はTM2側で行われるので、LeftかRightどちらかをペアリングするだけでOKです。
TM2を平置きにしたところ。
TM2は左右それぞれ3つのパーツから構成されています。TM2本体と、着脱式MMCXフレキシブル・ショート・ケーブル、着脱式MMCXイヤホンです。
TM2本体とフレキシブル・ショート・ケーブルは、左右が決まっているので、間違わないよう大きめに「L/R」が刻まれています。
イヤホン部を除いた重量は左右合わせて19.0gでした。BOSE SoundSport Free Wirelessが左右合わせて18.6gだったので、完全ワイヤレスイヤホンとしてはやや重め、といったところでしょう。
MMCXイヤホンを換装する前に、ちょっと気になるあの製品と比較してみます。
TRNの完全ワイヤレスイヤホンアダプタ BT20と比較
FOSTEX TM2の登場まで、完全ワイヤレスイヤホンアダプタとして独占的な地位にいたのが、TRN BT20です。
TRN BT20について詳しく知りたい方は、下記のレビュー記事をどうぞ。
カプセル状のTRN BT20(写真左)に比べると、角ばったFOSTEX TM2(写真左)は一回り大きく見えます。
ただ、小さく見えるTRN BT20も重量はそれなりで、14.3gあります。
音質については、TRN BT20は値段なりというか、この形状ほど際立った点はなく、FOSTEX TM2の圧勝です。ただ、TRN BT20はその低価格ゆえTM2の競合製品にはならず、換装型完全ワイヤレスイヤホンの入門編として、住み分けができています。
それでは、次はいよいよMMCXイヤホンを換装してみましょう。
SHURE SE425を完全ワイヤレスイヤホンに換装する
SHURE SE425をFOSTEX TM2に換装します。と言っても、コネクタ部がMMCXなので、リケーブルする要領で簡単に完全ワイヤレスイヤホンになります。
左右合わせた重量は23.3g。
耳に引っ掛けると、最も重量のあるTM2本体が耳の後ろに来るため、重量感はほとんど感じません。シュアがけしているのに、ケーブルがない、そんな印象を抱きました。
ONKYOのGRANBEATとペアリングしてみます。GRANBEATはaptX HDまで対応しますが、FOSTEX TM2の対応コーデックがAAC、aptX、SBCのみのため、aptXで接続されました。
音質は、ワイヤレスらしからぬ迫力と解像感!aptXでもここまで頑張れるのかと嬉しくなります。
※余談ですが、このGRANBEAT、Android搭載のDAPとして唯一無二のスマートフォンなんですが、後継機種が出ず、このまま終わってしまうのではないかと危惧しています。
Qualcomm TrueWireless Stereo Plusに対応するものの……
さて、FOSTEX TM2の特徴として、チップが最新のQualcomm QCC3032を搭載していることが挙げられます。QCC3032は、左右のイヤホンに個別に接続する「TrueWireless Stereo Plus」に対応しているため、音切れに強くなっています。
ただし、TrueWireless Stereo Plusが機能するためには、スマホ側での対応が必要です。2019年6月時点でTrueWireless Stereo Plusに対応したAndroidスマホは、ほぼ存在しません。
iPhoneとはAACコーデックで接続します
iPhoneはaptXコーデックに対応していないため、AACで接続されます。
先日、映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』を観てきたんですがめちゃくちゃ面白かったです。Apple Musicで配信されているサントラを聴いているんですが、ワイヤレスでも、本作の大迫力の音楽が聴けて満足です。
MMCXイヤホンなら問題なくケースに収まりそう
SHURE SE425に換装した状態で、充電用クレードルケースに入れてみました。MMCX端子はイヤホン側が回転するので、イヤホンのハウジングに多少厚みがあっても、難なく収まりそうです。
同じMMCX端子を採用したイヤホンとして、SATOLEXのTumuri DH303-A1にも繋いでみました。こちらもハウジングが小さめなので、問題なく収まります。
SATOLEX Tumuri DH303-A1はMMCXコネクタ搭載のイヤホンとしてはかなり安いので、リケーブル入門編としてもオススメです。
次は、別売りアダプタを使って、2pinイヤホンを換装してみます。
別売アダプタで、CIEM 2pin、A2DCにも対応します
TM2用のフレキシブル・ショート・ケーブルは全部で3種類あります。標準付属のMMCX、別売りのCIEM 2pinとFitEar 2pin、A2DCになります。一般的な2pin端子のイヤホンであれば、CIEM 2pinのフレキシブル・ショート・ケーブルを選びます。2019年11月には、A2DC(オーディオテクニカがMMCXをベースに開発したコネクタ)アダプターも登場しました。
こちらが別売りのCIEM 2pin用フレキシブル・ショート・ケーブル ET-TM2C2Pです。
CIEM 2pinケーブル(写真左)とMMCXケーブル(写真右)の比較です。CIEM 2pinケーブルの方は端子部が長めになっています。
KZ AS06を完全ワイヤレスイヤホンに換装する
まずは、KZ社の3BAイヤホン「KZ AS06」を完全ワイヤレスイヤホンに換装してみます。ハウジングがかなり大きいため、ケース収納時にはフレキシブル・ショート・ケーブルがやや突っ張るものの、ギリギリ収まります。
換装後も、迫力のあるAS06の音は健在です。
CCA C10を完全ワイヤレスイヤホンに換装する
続いて、CCA社の4BA+1DDのハイブリッドイヤホン「CCA C10」を完全ワイヤレスイヤホンに換装してみます。こちらはAS06に比べてハウジングが小さめなので、問題なく収まります。
ワイヤレスになっても、解像度が高くバランスのいい音を鳴らすCCA C10の魅力が活かされています。
CCA C16を完全ワイヤレスイヤホンに換装する
次は、CCA社の8BAイヤホン「CCA C16」です。今回のレビューの中では最重量・最大のイヤホンですが、ちゃんと収まっています。TM2のクレードルはかなり余裕のある作りのようです。
今回換装した2pinイヤホンの中では、このCCA C16が最も迫力があり、映画サントラの聞き応えは最も満足度が高かったです。
SIMGOT EM2を完全ワイヤレスイヤホンに換装する
最後は、SIMGOT社の1BA+1DDのハイブリッドイヤホン「SIMGOT EM2」です。ハウジングが小さいので問題なく収まるものの、2pinの端子が凸状なので、取り回しにやや不安を覚えます。
ただ、音の解像感と透明度はピカイチです。抜群にクリアな音を聴かせてくれます。
2pinのフレキシブル・ショート・ケーブルは、MMCXと違ってイヤホン側に遊びがない(回転しない)ため、着け外しの際にやや煩わしい感はあります。
その他、新しいイヤホンをレビューする際に、TM2との接続を行なっています。
ファームウェアアップデート&外音取り込みは……?
FOSTEXからコンパニオンアプリが登場しました。(iOS版が先行してリリースされていましたが、Android版も登場しました)
ペアリングした状態でアプリを起動すると、TM2のステータスが表示されます。最新のファームウェアアップデートもここから行えま
「Landscape Sound」をオンにすると、外部の環境音を取り込むことができ、その具合もスライダーで調整することが可能になります。
今後は、イコライザーやボイスアシスタントの呼び出し機能が追加されるそうです。
まとめ
いやー、楽しい。お気に入りのイヤホンたちがすべて完全ワイヤレスで使えるという自由度は、何物にも代え難いものがあります。満を持して発売されただけあって、音質・接続の多様性など、高い次元で実現されており、満足度が高いです。
また、専用アプリや外音取り込みなど、将来のアップデートにも期待が持てます(※2019年10月にリリースされました)。唯一無二で完全無欠な製品と言いたいところですが、唯一にして最大のネックはやはりその価格。ハイエンドな完全ワイヤレスイヤホンが買えてしまう価格帯なので、熟考の上、ご購入ください……。