USB-Cオーディオ市場が本格始動
2018年はUSB-C接続によるデジタルオーディオ市場が本格始動した年になりました。iPhone同様に、Androidスマホでもイヤホンジャックの廃止が進み、Google純正のフラッグシップスマホPixel 3でその流れが確定的になりました。
そして、2018年10月に登場したiPad Proの新モデルはLightningポートとイヤホンジャックを廃止しUSB-Cを採用しました。iPadもデジタルオーディオの世界に突入です。一方オーディオ機器側も、SHUREからはUSB-Cを採用したMMCX対応ケーブルが発売され、高音質なデジタルオーディオを聴く環境が、着々と揃いつつあります。
今後、USB-Cを採用したオーディオ製品はますます増えていくことが予想されます。
今回紹介するのは、手持ちのイヤホンを高音質なデジタルオーディオに対応させてくれるUSB-Cアダプターです。
moshiのUSB-C デジタルオーディオアダプタ
今回紹介するのは、moshi製のデジタルオーディオアダプター2製品です。それぞれ紹介していきますね。
本製品以外のUSB DACは下記記事にてまとめています。
moshiブランドについて
moshiの名前を聞いてピンとくる人は、古くからのAppleユーザーかもしれません。iPhone以前からMac向けの周辺機器を発売しているブランドで、デザインに優れた製品を出しています。Apple Storeでもmoshi製品が販売されているので、目にしている方も多いのではないでしょうか。
日本国内でのmoshi製品は、MJSOFTさんが国内正規代理店として取り扱っています。MJSOFTさんも古くからのMacユーザーにはおなじみの販売店ですね。以前は東京・自由が丘に実店舗があったので、近くに住んでいたときは時々利用させてもらってました。現在は東京都大田区鵜の木に店舗があるようです。
さて、では製品レビューにうつりましょう。
充電端子付きのデジタルオーディオアダプター
今回紹介するmoshi製USB-Cアクセサリの1つ目は「moshi USB-C Digital Audio Adapter with Charging」です。名称から分かる通り、充電用のポートが付いたデジタルオーディオアダプタ。24bit/96kHzに対応したDACを搭載しています。(Amazonでは192kHzに対応したモデルが販売されています。)
パッケージ正面の右隅に「for Google Pixel xxx」と各種Pixel製品の名前が列挙されています。最新のPixel 3 / 3 XLをはじめ、いずれもUSB-Cをメインのポートとして採用した製品群ですね。
内容物としては、このデジタルオーディオアダプターのみです。
アルマイト仕上げのアルミ製の本体は、高級感があるとともに、非常に軽くなっており、重量はたったの24gしかありません。
高級感のあるアルミ製のボディにシンプルな「moshi」ロゴが入っています。
ポートは、3.5mmイヤホンジャックと、給電用のUSB-Cポートがあります。
背面を見ると、給電専用であることが分かるようにアイコンが表示されています。
次の製品も見てみましょう。
シンプルなデジタルオーディオアダプタ
2つ目ののmoshi製品は「moshi USB-C Digital Audio Adapter」。製品名称としては、先ほどの製品から「with Charging」つまり給電用の端子が除かれたシンプルなもの。しかし、DACは24bit/192kHzに対応し、G級アンプ(Class G amplifier)まで搭載している、音質を追求した製品になっています。
製品自体は両端にコネクタだけがある、シンプルな形状をしています。
こちらは僅かに6.5gしかありません。めちゃくちゃ軽いです。
イヤホンジャック側に「moshi」のロゴが入っています。
反対側のUSB-Cコネクタには「24-bit/192kHz」とあり、ハイレゾクラスのデータに対応していることがアピールされています。
この「moshi USB-C Digital Audio Adapter」のUSB-Cコネクタは大きめに作られており(写真上)、1つ目の「with Charging」(写真下)よりも長くなっています。USB-Cコネクタ側にUSB DACを入れているのですね。
外観についてはこのくらいにして、実際の音質を聴いてみましょう。
他社製品と音質を比較レビューします
今回紹介しているmoshiの2製品は、ただの変換アダプターではありません。
「moshi USB-C Digital Audio Adapter with Charging」は24bit/96kHzのDACを、「moshi USB-C Digital Audio Adapter」は、192kHz/24bit対応のDACとG級アンプ(Class G amplifer)をそれぞれ搭載しています。
そこで今回の比較に用いるのは、ULTRASONEのNaos(写真左)、RADSONE Earstudio ES100(写真左から2番目)、FiiO BTR3(写真中央)の3製品を用意しました。これらのDACをUSB-C経由でiPad Proに接続し聴き比べます。
比較のためのイヤホンとして、モニターに向いたSHURE SE425を使用します。
さらに、比較に用いる楽曲は下記の5曲。
- チュニジアの夜(HANK JONES -The Great Jazz Trio- – LAST RECORDING)DSD | 1bit/2.8MHz
- MAIN TITLE AND ESCAPE(JOHN WILLIAMS – スター・ウォーズ/最後のジェダイ OST)FLAC|192.0kHz/24bit
- タバ作戦(Fob_ 01)(総監督:鷺巣詩郎 指揮:天野正道 演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 – シン・ゴジラ対エヴァンゲリオン交響楽)FLAC|96.0kHz/24bit
- ホトハシル(ORESAMA – ホトハシル)FLAC|96.0kHz/24bit
- Get Wild(TM NETWORK – Get Wild)FLAC|96.0kHz/24bit
いずれもmora.jpで購入したハイレゾデータです。
まずは参考に:他社製DACの音質レビュー
ULTRASONE Naosの場合
NaosのUSB DACとしての実力はとにかく「大迫力」。音量を絞った状態でも、かなりの音圧とともに音を鳴らし始めます。
特に、耳慣れたスター・ウォーズの「MAIN TITLE AND ESCAPE」は冒頭からオーケストラの豪華な音色が迫ってくるし、HANK JONESの「チュニジアの夜」はピアノ・ドラム・サックスの空間での響きが良く、……とまあ、Naosの宣伝になってしまうのでこの辺りにしておきますが、空間の解像感、迫力のある音、きめ細かい解像感、電源不要のDACとしては最高峰とも言える性能を叩き出します。ただしお値段もそれなり。
※ULTRASONE Naosはすでに販売が終了しているようで、ULTRASONE公式サイトでもDiscontinued(廃止)のカテゴリーに入っていました。後継機もないようで、残念。
RADSONE EarStudio ES100の場合
EarStudio ES100は、本来Bluetoothで接続するワイヤレスヘッドホンアンプですが、USBケーブルで直結することでUSB DACとして機能します。
「MAIN TITLE AND ESCAPE」や「タバ作戦(Fob_ 01)」のようにオーケストラの多彩な音の重なりよりも、「ホトハシル」や「チュニジアの夜」「Get Wild」のように楽器やボーカルの主張がある方が、音に厚みが出て、エッジがキレキレになり、Naosよりも聴きごたえがよくなる。楽曲により得意なものとそうでないものが分かれるけれど、総じて音に厚みが増すので、どの音楽でも楽しめます。
FiiO BTR3の場合
FiiO BTR3もEarStudio ES100同様に、Bluetoothワイヤレスヘッドホンアンプ。
主張の強かったNaosや、キレッキレだったEarStudioと比較すると、音のエッジがまろやかになり、どの楽曲を聴いても耳ざわりの良い音作りになっています。前2機種と比べると、解像感と音圧は一段落ちる感じですが、あくまで比較論であってBTR3自体も十分にいい音を出しています。
それでは、いよいよmoshi製2製品の音質レビューに移りましょう。上記3製品と比較していきますが、そもそもオーディオ製品として価格帯が全く違うことはお忘れなく。
moshi USB-C Digital Audio Adapter with Chargingの場合
USB-Cで充電しながら音楽が聴けるUSB DACです。自宅やカフェなどで、コンセントやモバイルバッテリーで充電しながらでも音楽が楽しめます。
「チュニジアの夜」では、ピアノの音を始めとした高音域の解像感がよく、ハッと目が醒めるような響きがあります。ベースの弦の振動の空気感も伝わってきます。一方で「タバ作戦(Fob_ 01)」では重厚感がなく、「MAIN TITLE AND ESCAPE」ではオーケストラの迫力が今ひとつ二つ足りません。「ホトハシル」「GetWild」では、解像感が足りず物足りなさはありましたが、高音域のキレはよくボーカルが際立ち、心地よく聴くことができました。
上の3機種とは差がありましたが、そこは予想の範疇で価格なりということでしょう。しかし、価格性能比でいけば十分であり、充電しながらいい音で聴きたいという用途であれば、期待を裏切らないアダプターです。
moshi USB-C Digital Audio Adapterの場合
充電機能のないアダプターですが、DACとしての性能は「with Charging」より上であり、いい音を聴かせてくれることは想像にかたくありません。
実際に聴いてみると、「チュニジアの夜」は空間の広がりを感じることができ、楽器の解像感も上がっています。「MAIN TITLE AND ESCAPE」は音圧が増し、音のキレも明らかにレベルが上がっていました。「タバ作戦(Fob_ 01)」は楽器の解像感には欠けるものの、音に力がありホールでの演奏の迫力が伝わってきます。「ホトハシル」はぽんちゃんのボーカルにエッジがあり、スピード感のある楽曲がより際立って聴けます。「Get Wild」は高音域が際立ち、早くシティー・ハンターの新作映画を観たくなるレベルで盛り上がりますね。
シンプルなアダプターで解像感はもう一歩踏み込みが欲しいところですが、G級アンプを採用した成果なのか、全体的に音に迫力があります。このため、ハイレゾ楽曲やリマスター楽曲のようにポテンシャルのある楽曲ファイルであれば、1万円を超えるポータブルDACに迫る音を出すことがあります。
何よりこのアダプター、これだけの性能を考えるとかなりリーズナブルです。掘り出し物の予感がビンビンしてます。
まとめ
というわけで、moshi製の2つのUSB-Cアダプターをレビューしてみましたが、どちらも用途がハッキリしており、充電しながら音楽を聴きたいのであればmoshi USB-C Digital Audio Adapter with Charging、従来のイヤホンを使っていい音で聴きたいのであればmoshi USB-C Digital Audio Adapterを選べばいいでしょう。
USB-Cで聴くデジタルオーディオ、まだまだ進化していきそうです。