待ちに待った、SHUREの完全ワイヤレスイヤホン
2020年1月、米・ラスベガスで開かれたCES2020にてSHUREから発表されたのが、ワイヤレスリスニング製品群「AONIC」の完全ワイヤレスイヤホン「AONIC 215」です。
SHUREとしては初の完全ワイヤレスイヤホンとなります。同年4月3日(金)、ついに発売開始となりました。
AONIC 215とRMCE-TW1
SHUREが完全ワイヤレスイヤホンを発売するにあたって、採用したのは従来のイヤホンを活かすことのできるアダプター方式でした。
本サイトでも過去にTRN BT20やFOSTEX TM2、FiiO UTWS1といったアダプターをレビューしてきましたが、従来の資産を活かせるという意味で、理にかなった方式といえます。
今回リリースされたのは、SE215を組み合わせたAONIC 215です。AONIC 215はSE215のカラーバリエーションに合わせて、トランスルーセントブルー・ホワイト・トランスルーセントブラック・クリアの4種類が発売されました。
※2021年9月に第2世代となるAONIC215 Gen2にリニューアルされました。リンクを差し替えています。カラーバリエーションはトランスルーセントブルー・トランスルーセントブラックの2カラーとなったようです。
アダプターのみの製品には「RMCE-TW1」という型番が割り当てられ、単体で発売されました。
※なお、2021年9月に第2世代の「RMCE-TW2」が発売されたためリンクを差し替えました。
RMCE-TW1のレビューはこちらです。
SHURE AONIC 215をレビュー
発売日に購入できたので、レビューしていきます。ヨドバシ.comの取り置きを利用して、店頭で受け取ったんですが、店の奥から店員さんが持ってきたAONIC 215のパッケージを見た第一印象は「デカっ!」でした。
パッケージはデカいが、SHUREの意気込みも感じる
円筒型のパッケージです。今回購入したのはトランスルーセントブラックモデルです。どうやら、カラーバリエーションごとにパッケージが用意されているようです。
上部から、吊り下げ用の布ベルトが出ています。
厚みもけっこうあるんですよ。バウムクーヘンでも入ってるのかな?って思うようなパッケージです。
隣にiPhone 11 Pro Max(写真右)を並べてみました。6.5インチサイズのiPhoneがこれだけ小さく見えるわけですから、実際にパッケージを手に取るとかなり大きく感じます。
パッケージ背面にも情報が盛りだくさん。内容物(Included)の欄にはRMCE-TW1 Wireless Adapter Setという記述がありました。これが正式名称ですね。
パッケージ底面には、滑り止めが2箇所に付いています。つまり……
こうやって立ててくれということです。円形のパッケージが直立するのか……。スペースがある方は、購入後もぜひディスプレイしてください。
パッケージを開くと、同じく円形になったマニュアルが乗っています。ここまで揃えるとは……パッケージにかける意気込みすごいです。
それでは、いよいよ中身を見ていきましょう。※ちなみに、AONIC 215が取り出しづらかったです。破損しないようご注意ください。
内容物はこちらの通り。マニュアル、RMCE-TW1 ワイヤレスアダプターセット+SE215イヤホン、プレミアムチャージングケース、USB Type-Cチャージングケーブル、ソフトフォーム&ソフトフレックスイヤーパッド S/M/L(イヤーピース)となっています。
マニュアルに至っては、文字レイアウトが円形に沿って、全てこの通り。徹底してます。
付属するイヤーピースは、ソフトフォームタイプと、ソフトフレックスタイプがそれぞれS/M/Lタイプで揃っています。(AONIC 215にはソフトフォームタイプのMサイズが最初から付属しています)
それでは、次にSHUREのこだわりが詰まった充電ケースを見ていきましょう。
SHUREの充電ケースは、プレミアムチャージングケース
こちらが、AONIC 215専用の充電ケース、名称としてはプレミアムチャージングケースです。SHUREのロゴがエンボス加工されています。
完全ワイヤレスイヤホンでよくあるハードケースと異なり、ジッパーで開閉するソフトケース風の充電ケースになっています。見た目には充電ケースと思えません。
プレミアムチャージングケースはUSB Type-C(以下、USB-C)で充電ができます。USB-Cポートが一段下がっているので、ケーブルをしっかり挿しこむことができます。
底面には、充電ケースの残量LEDが搭載されています。バッテリーボタンを押すと数秒点灯するようになっています。
イヤホンケースとバッテリーが融合したデザインに仕上がっていて、USB-Cケーブルを挿すことでそれが際立ちます。
ジッパーを開けると、ケースは180度開くことができます。AONIC 215は、中央のパーツでしっかり固定されます。
AONIC 215は、中央と根元の2箇所で固定されるため、プレミアムチャージングケースを開いた状態でも、一切動きません。しっかり固定される反面、AirPods Proのようにサッと取り出し・サッと挿入、といったことはできません。
AONIC 215の充電状況は、LEDで表示されます。
このLEDの状況は、プレミアムチャージングケースを閉じた状態でも分かるようになっています。
完全ワイヤレスイヤホンとしては最後発になるだけあって、一つ一つの作り込みが妥協なく、しっかり作られていると感じました。
AONIC 215は、RMCE-TW1+SE215の組み合わせ
それでは、AONIC 215本体を見ていきましょう。今回購入したAONIC 215のカラーはトランスルーセントブラック。ブラック一色の統一感があります。
SE215は初めて購入しましたが、トランスルーセントブラックの透明感が美しいですね。
AONIC 215の重量は19.9g。大きさの割にはかなり軽く感じます。長く耳にかけるものなので、これくらい軽量にできているといいですね。
ただし、充電ケースも込みだと、134.2g。完全ワイヤレスイヤホンとしては最重量級です。
こちらがAONIC 215のユニットになります。SE215を中心として、対数螺旋のような曲線を描いています
操作系はこのボタンに集中しています。押す(再生/停止)、長く押す(電源ON/OFF)、2回押す(環境モードON/OFF)など、一つのボタンで様々な操作を可能にします。
このボタン部分に、充電用の接点があります。
ボタンの裏側には大きく「L」「R」の表示があります。これは間違えませんね。
付属しているのは、間違いなくSE215です。
そして、このAONIC 215の最大の特徴は、RMCE-TW1 ワイヤレスアダプターとSE215が分離できること。
汎用的なMMCXコネクタでの接続が可能になっています。
のちほど、SE425に換装してみます。
メガネでも大丈夫?AONIC 215を装着してみる
実際にAONIC 215を装着してみます。
耳を回り込むようにフィットするので、密着感と安定感があります。
一方で、メガネをかける方には、耳が痛くなりそうな形をしています。実際のところどうななのか。私自身がメガネをかけているので、メガネとAONIC 215を一緒に付けてみました。
メガネのつるの外側を回り込むように、外側に広がるように装着されます。
2時間ほど聴き続けてみましたが、装着感がいいので、疲れる感じはありませんでした。
アプリで設定する
AONIC 215の設定は、スマホのコンパニオンアプリから行います。アプリ名は「ShurePlus PLAY」。カテゴリは「ハイレゾオーディオプレーヤー」になっています。
Bluetoothでペアリングされている状態であれば、デバイスは自動で見つかります。左右のユニットの電池残量もここで分かります。環境モードというトグルがあり、ここをONにすると、環境モードのレベルを設定できます。
環境モードとは、他社でいう「外音取り込み」や「トランスペアレントモード」と呼ばれている機能です。SE215がカナル型イヤホンのため、耳栓のような状態になります。周囲の音が聞こえづらくなるので、周りの音のレベルをこの機能で調整します。
イコライザもアプリ内から設定が可能です。プリセットのほか、カスタムプリセットを作成することもできます。
AONIC 215のファームウェアアップデートもこのアプリを経由して行えます。また、このアプリ自体がハイレゾプレーヤーとして機能するため、個別にハイレゾファイルを取り込んで聴くこともできます。
【追記】SHURE製イヤホンごとの特性を活かしたプリセットも
接続されているイヤホンを指定することで、イヤホンに合わせたリスニング環境が設定できます。
AONIC215のあとに、SHURE初のハイブリッドイヤホンAONIC 4を購入したので、それを設定して使っています。
RMCE-TW1に、SE425を換装して聴いてみる
さて、AONIC 215の能力は十分に分かってきたので、いよいよ本題に入っていきましょう。SE215を取り外し、同社のSE425に換装します。
ハウジングのサイズは同じなので、プレミアムチャージングケースにも問題なく収まります。
これで、AONIC 425と呼んでもいいですかね?
RMCE-TW1に、AONIC 4を換装して聴いてみる
SHURE初のハイブリッドイヤホンであるAONIC 4に換装してみました。
AONIC 4のレビューはこちらから。
他社の完全ワイヤレスアダプターと比較してみる
RMCE-TW1は、既存のMMCXイヤホンを完全ワイヤレスイヤホンに変える、魅力的なワイヤレスアダプターですが、このジャンルはSHUREが初めてではありません。
世の中に存在する完全ワイヤレスアダプターは、大きく分けて、次の3タイプのみです。SHURE RMCE-TW1(写真上)、FOSTEX TM2(写真左下)、FiiO UTWS1(写真右下)の3種類です。※FiiO UTWS1とTRN BT20S / TRN BT20は類似製品として理解しています。
見た目に似たようなアダプターですが、大きく異なるのが充電方式の扱いです。SHURE RMCE-TW1(写真上)はバッテリーを内蔵した充電ケース、FOSTEX TM2(写真左下)はバッテリーを“内蔵しない”充電クレードル、FiiO UTWS1は二股の充電ケーブルです。
このほか、充電コネクタを見た際に、SHURE RMCE-TW1はUSB-Cですが、その他はMicro USBです。それでは、RMCE-TW1&SE425の音質をチェックしつつ、他のアダプターにもSE425を接続して比較してみます。
RMCE-TW1の音質は?
RMCE-TW1の音質を一言で表すと「重厚」です。完全ワイヤレスイヤホン全体を通しても、ここまで厚みのある音を出せるイヤホンは珍しいです。解像感もよく、イコライザーがOFFの“素の状態”でこれだけの音質が出れば、ワイヤレスイヤホンとしての性能は十分でしょう。
RMCE-TW1のワイヤレスアダプターとしての実力は本物なので、あとは、どんなイヤホンを接続するかによって、その真価が発揮されるでしょう。
そして、この3機種の中で、最も装着感がいいのはRMCE-TW1です。さらに、プレミアムチャージングケースの出来もよく、完全ワイヤレスイヤホンとしてのトータルバランスは最も優れています。
FOSTEX TM2と比較すると?
FOSTEX TM2の音質は「フラット」です。音場が広く、解像感も高め。ショートケーブルを交換することで、世の中のケーブル交換式イヤホンの大多数に対応できるため、イヤホンの特性を邪魔しない、素直な音作りになっているように感じます。
装着感は今回の3製品の中で最も悪いです。しかし、FOSTEX TM2の最大の特徴は汎用性です。ショートケーブルを交換することで、MMCXだけでなくカスタムIEM 2pinやA2DC、FitEar 2pinなど様々な規格に対応ができます。
充電クレードルにはバッテリーは搭載されていませんが、内部のスペースが広く開いているので、かなりの数のイヤホンが対応できるでしょう。レビュー記事でも試していますが、私の手持ちのイヤホン12機種で、クレードルに収まらないイヤホンはゼロでした。
FiiO UTWS1と比較すると?
FiiO UTWS1の音質は「ポップ」です。低音の軽さが目立ちますが、解像感もあって、音場もそこそこ、開放感のある音です。プレミアムな2製品に比べると、レベルが何段か落ちますが、価格を考えれば十分な性能が出ています。
装着感もそこそこいいのですが、問題は電波強度です。満員電車の中ではブツブツ切れることがあり、左右のユニット間の電波が弱いようです。また、充電ケーブルの取り回しも煩雑なので、価格なりに妥協しなければならない点があります。
ただし、MMCXタイプと2pinタイプが揃っており、リーズナブルな完全ワイヤレスアダプターとしてのポジションは揺るがないでしょう。なお、FiiO UTWS1は2020年4月時点で日本未発売(Aliexpressは日本まで発送してくれます)、TRN BT20Sは日本のAmazonで購入できます。
完全ワイヤレスアダプターのオススメは?
ここまで読んでもらうと分かる通り、3機種それぞれにメリットがあります。
- SHURE製品を使っているなら、SHURE RMCE-TW1です
- MMCX以外のケーブル交換可能なイヤホンなら、FOSTEX TM2です
- とりあえず安くお試ししたいなら、FiiO UTWS1 / TRN BT20Sです
今後、他のメーカーが参入してくるのか分かりませんが、ミドルレンジの製品が欠けているので、1万円台前半で購入できる製品があると、盛り上がりそうです。
RMCE-TM1のライバルは、RMCE-BT2か?
他社の完全ワイヤレスアダプターを聴き比べてみて、RMCE-TW1の実力が想像を超えて素晴らしいものであることは分かりました。そうなると、気になるのが同じSHUREのワイヤレスアダプターであるSHURE RMCE-BT2です。
プレミアムヘッドフォンアンプを搭載し、MMCXコネクターでリケーブル可能なRMCE-BT2(写真左)とRMCE-TW1(写真右)には差があるのでしょうか?
同じSE425に換装して聴き比べてみたところ、明確に差がありました。
どちらもワイヤレス製品としては素晴らしい音質ですが、完全ワイヤレスタイプのRMCE-TW1は厚みのあるリスニング重視の音質、RMCE-BT2は解像感高めで全音域がクリアに聴こえるフラットな音質です。
SHUREはAONICを「音楽に携わる、音楽を楽しむ、すべてのリスナーに」「ワイヤレスリスニング」と明記しています。AONICのテーマは、SHUREとしての新たな音楽体験を開く、第一歩となるのかもしれません。
第2世代のAONIC TW2が登場!
2021年9月、第2世代となるAONIC 215 GEN2が発売されました。それに合わせて、完全ワイヤレスイヤホンアダプターもRMCE-TW2となり一新。第1世代のRMCE-TW1とどう変わったのか比較レビューしています。
まとめ
見どころが多かったAONIC 215、完全ワイヤレスイヤホンとしては最後発になりますが、待っただけの甲斐がある、非常に素晴らしい製品に仕上がっています。気になっている人は、悩むだけ時間の無駄です。早く買って、楽しみましょう!
なお、本当はワイヤレスアダプター単品(RMCE-TW1)を待つつもりだったんですが、後日発売とのことで、待ちきれずにAONIC 215を買ってしまいました。差額でSE215が手に入ったと思えば、とてもお得な買い物でしたけど。(後日、RMCE-TW1も買いました)
ちなみに、SHURE製品は2年保証です。安心して購入してください。
※AONIC215は第2世代にリニューアルされたので、リンクを差し替えました。