Bluetoothの音の弱さをどう解決するか?
Bluetoothワイヤレスオーディオの便利さは誰もが認めるところですが、よく懸念点として挙げられるのが「音が悪い」。もちろん、これを解決するためにaptX HDやLDACなどの高音質コーデックが投入されたわけですが……違ったアプローチでこれに挑戦した製品があります。
Kickstarter発のBluetoothレシーバー
Bluetoothのオーディオレシーバーといえば、汎用的なイヤホンジャックを持ち、有線イヤホンをワイヤレス接続してくれるアダプター。単体で動作するBluetoothイヤホンが珍しかった頃、私もSONYのレシーバーを使っていました。
そのうち、Bluetoothイヤホンが一般的になり、完全ワイヤレスイヤホンなども出て、Bluetoothオーディオレシーバーはその役目を譲ったように思えました。
しかし、2017年にKickstarterで始まったこのプロジェクトをきっかけに、状況は大きく変わります。
EarStudio: World’s first studio-quality Bluetooth receiver
メーカー | RADSONE |
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Bluetoothバージョン | 5.0 |
Bluettohチップ | Qualcomm CSR8675 |
対応コーデック | SBC、AAC、aptX、aptX HD、LDAC |
出力端子 | 2.5mm/3.5mm |
AMP/DAC | 旭化成エレクトロニクス AK4375A × 2 |
バッテリー持続時間 | 14時間 |
Radsone社のEarStudio ES100
私はKickstarterで入手したのですが、日本でも一般販売されています。訳あって買い直したので、今回は一般販売分のレビューです。
パッケージはめちゃめちゃ小さいです。
iPhone XS Maxと比べてもこのくらい。
内容物も、EarStudio ES100本体と簡易マニュアル、MicroUSBケーブルだけ。
実際に使ってみます。
EarStudio ES100のレビュー
iPhone XS Maxと比較してもこの大きさ。非常にコンパクトです。
背面にクリップが付属しています。写真下に見える穴は外音取り込み用です。
反対の側面を見てみます。こちらにもイヤホン端子があるのに気づかれたかと思います。実はEarStudio ES100には2.5mmと3.5mmのイヤホン端子が備えられています。こちら側は2.5mmです。
天面側にはストラップホールもあります。
底面にあるのはMicroUSBポートです。
背面のクリップはここまで開きます。
表面は何もないシンプルな面のように見えますが……
ここにはリング状のLEDが仕込まれており、ペアリング時や電源ON時には青色や緑色のリングに変わります。
ES100単体で高音質Bluetoothレシーバーとしても使えますが、MacやPCに繋いで、USB DACとして使用することもできます(USBオーディオとして認識されます)。
EarStudio ES100自体はBluetoothで接続できますが、本領を発揮するにはiOS/Android用のコンパニオンアプリを連動させる必要があります。
アプリの説明の前に、イヤホンを接続してみましょう。EarStudio ES100向かって左側に挿せるのは3.5mmのイヤホン。
アプリ上でも3.5mm アンバランス接続と認識されています。
反対側は2.5mmバランス接続です。
こちらもアプリ上で2.5mm バランス接続であることが認識されています。
ES100は、LR両方のチャンネルにAK4375Aを備えており、コーデックがAACであっても、それを感じさせない迫力の高音質で鳴らしてくれます。
アプリで拡張する機能
アプリ起動時の画面は左側(ES100ペアリング済)。入力側(Input)と出力側(Output)の状態が記されており、コーデックも併記されています。InputとOutputを結ぶ白いバーはバッテリー残量。非常にわかりやすいです。
ANALOG VOLUMEはES100のボリュームで、SOURCE VOLUMEはスマホ側のボリュームです。基本はスマホ側をMAXにして、ES100の実力を存分に活かしたいところです。LRそれぞれのボリュームも設定できます(写真右)。
細かいポイントですが、アプリから電源OFFできるのが地味に気に入っています。
アプリ内でイコライザーの設定もできます(写真左)。プリセットされた項目を選んでもいいし、自分で変更もできます。また、アンビエントモードといって、外の音を取り込みながらの再生も可能です(写真右)。※外音取り込みの機能は、メーカーによってはトランスペアレントモードなど名称が異なります。
Bluetoothのペアリング設定についての画面です(写真左)。ES100は同時に2台までペアリングできるため、それぞれのステータスが見られます。ハンズフリープロファイルやUSB DACについての設定もあります(写真右)。こちらは必要のある人が切り替えるものでしょう。
続いて、Bluetoothの設定画面です。アクティブになっているコーデックについての設定が可能になっています(写真左)。また、コーデックオプションにより、明示的にONにしたいコーデック、OFFにしたいコーデックを選択できます(写真右)。
非常に盛りだくさんで、こういった設定をいじっているだけでも楽しくなるほど。
ファームウェアアップデートで進化するES100
そして、EarStudio ES100の真価は、ファームウェアアップデートで進化していくことでしょう。通常、こういったデバイスのファームウェアアップデートは、バグフィックスや機能修正のために用いられますが、Kickstarterでの製品が発送されてしばらくすると、コーデックとしてLDACが加わるなど、Radsoneでは積極的な機能追加を行っています。(2018年11月のアップデートでは、Bluetooth5.0に対応しています)
ファームウェアの更新情報はアプリからもプッシュされますが、Radsoneの公式サイトでも見ることができます。
この手のファームウェアアップデートでは、Windowsだけが対象で、macOSに対応していないことがよくありました。しかし、EarStudioはmacOSを使ったアップデートにもしっかり対応しているのが嬉しいところです。
なお、macOSによるアップデートにはターミナルを使う必要があるため、コマンドラインに抵抗のある人はちょっと敷居が高い操作になります。
マニュアルに書いてある通りに進めていけば苦もなくアップデートできるのですが、苦手な人は苦手ですよね。
詳しくは、ファームウェアのアーカイブに添付されている日本語マニュアルを参考にしてください。とても丁寧に書いてあります。
Bluetoothレシーバーに足りない“短いケーブル”
Kickstarterで買ったときは、2.5mmバランス接続のMMCXケーブルがオプション購入できました(写真右)。このケーブル、日本のUNCMMON社の製品で、実は非売品。45cmという短さは普段使いには短すぎますが、Bluetoothレシーバーで使うにはちょうどいい長さです。
2.5mmのみならず3.5mmでも、この短さのMMCXケーブルってなかなかないんですよね。せいぜいあっても90cm(0.9m)。
需要がないせいだと思いますが、ケーブル欲しさにこういう製品を購入したこともありました。とにかく、市場になさすぎです。
FiiOからこういった製品も出ていました。
まとめ
ハイレゾ相当のコーデックにも対応し、USB DACとしてMac/PCでも使うことができ、2.5mmバランス接続もできて、さらにファームウェアアップデートで進化の余地を残すEarStudio ES100、控えめにいっても最高、いや神レベルの名品です。
ニッチな製品ではありますが、クラウドファンディングという場から羽ばたいてくれたことを嬉しく思います。
ES100のライバルとなる、ワイヤレスヘッドホンアンプのまとめ記事は下記からどうぞ。