今回紹介するのはクラウドファンディングサイト・GREEN FUNDINGでプロジェクトが実行されたイヤホン「Cleer ARC2」です。(Cleer ARC2のGREEN FUNDINGプロジェクトページ)
CleerのARCと言えば、“ながら聴き”できるオープンイヤータイプのワイヤレスイヤホン……その新製品がクラウドファンディングに登場したということで、興味があったので購入してみました。
Cleer ARC2の3つのエディション
GREEN FUNDINGで購入する際に迷ったのは、Cleer ARC2に3つのエディションが存在したことです。カラーバリエーションとかではなく、機能別に次の3つのエディションがあったのです。
最初のNormal Editionは全てのモデルに共通するベースモデル。Sport Editionは防水性能と抗菌性能を高めています。Game Editionは専用のUSB-Cドングル付属で低遅延性能を高めています。
2023年10月6日(金)に予約開始、3モデルとも10月13日(金)発売です。
今回購入したのは、GAME Editionです。ゲーム目的ではなく、高音質化に期待してGAME Editionにしました。iPhoneやMacを使っているとコーデックの限界(AACまで)がありますが、専用のUSB-Cドングルを仲介することで、aptX Adptiveで聴くことができるから、です。
Cleer ARC2 GAME Editionをレビュー
こちらがCleer ARC2 Game Editionのパッケージ。VGP 2023 SUMMERの受賞シールが貼ってあります。部門はワイヤレス大賞、GAME Editionとしての受賞でした。
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングのリンクは、公式代理店のエミライダイレクトにリンクしています。
VGPの受賞製品に興味のある方は、下記のリンクからどうぞ!
今回は、GREENFUNDINGのクラウドファンディングで入手した製品なので、CleerのCEOであるパトリック・ファン氏からのお手紙が入っていました。
クラウドファンディングではメーカーとの距離が近くなるので、こうした思いがより響くんですよね。
クラフトパッケージの内箱になっていて、側面から引き出します。開封していきましょう。
こちらがCleer ARC2のケース。石のような模様の、ファブリックな生地です。
付属品は、Cleer ARC2のほか、ユーザーマニュアル&クイックスタートガイド、USBケーブルとなっています。
充電ケースは扁平で、ファブリック地で手触りは滑らか。背面に充電用のUSB-Cポートがあるだけ(写真右)。CleerロゴとUSB-Cポート以外の要素がない、シンプルなケースです。
しばらく使ってみて感じたのは、「ケースの外側にバッテリー状況を示すLEDがない」ため、充電中なのか充電が完了しているのか、分かりにくいということ。デザイン優先なのかなとは思いました。ちなみに、Qiワイヤレス充電には対応しません。
ケースを開けてみると、Cleer ARC2が収まっていました。
ケースのフタ裏にはGAME Editionだけに付属するUSB-Cドングルが収納されています(写真左)。ケース込みの重量は128.2g(写真右)、完全ワイヤレスイヤホンとしてはまあまあ重い部類ですが、ケースの面積も大きいので、重いとは感じません。
Cleer ARC2自体で8時間の利用時間がありますが、この充電ケースを併用することで+27時間も使えるようになります。1.5日聴けるほどの容量です。さらに、イヤホン自体も、10分で2時間の使用が可能な急速充電に対応しているので、バッテリーで困ることはあまり無さそうですよ。
耳かけしやすく・落ちにくいCleer ARC2のユニット
ここからはCleer ARC2の左右ユニットを見ていきましょう。
実は、GREENFUNDINGのプロジェクト中に、Cleer ARC2は製品設計の見直しが行われました。それは、イヤーフックの部分を細くするというもの。先行してレビューしていたインフルエンサーの皆さんに配布された製品と比べてみると、明らかに細くなっているのが分かります。
この設計変更のおかげか、数時間耳にかけていても、全く痛くならず快適に音楽を楽しめています。
レビューに戻りましょう。Cleer ARC2の重さを計ってみます。左右のユニットで24.4g。片耳で約12.2gになります。実際に耳にかけてみると分かりますが、ほとんど気にならない軽さです。
ユニットを詳しく見てみましょう。内側には、充電端子とスピーカー(写真左)、外側には、マイク穴とCleerロゴ。この面がタッチ操作面になっています。
このユニットの中には、カナル型のイヤホンを遥かに超える16.2mmという大口径のドライバーが入っています。音質に期待したいところです。
Cleer ARC2のかけ心地は抜群にいい、ほぼ揺れない
メガネをかけた状態で、耳にかけてみました。耳の穴より少し上に配置されます。Cleerロゴが水平になるような位置にかけてください。
外から見ると、耳の穴にイヤホンをしているように見えそうです(写真左)。ちなみに、私はメガネをしていますが、耳の付け根が痛くなるようなことはありません(写真右)。
GREEN FUNDINGのプロジェクト中にもちょくちょく報告がされていましたが、耳へのかけ心地に関しては慎重に調整されたようで、そのおかげもあってか、ストレスなくかけていられます。
Cleer ARC2をiPhoneとペアリングして聴いてみる
Cleer ARC2をiPhoneとペアリングして聴いてみました。USB-Cドングルが付属しているGAME Editionですが、Normal Editionと同様にBluetoothでの接続も可能です。
ファーストインプレッションは、目の覚めるような高音質でした。音の一つ一つをなぞることができるように、解像感がすごいです。オープンタイプのイヤホンということもあって、どこまでも晴れやかで広い音域で周囲と一体化した音を楽しむことができます。
Bluetoothで繋いだだけでこれなので、USB-Cドングルを使ったときの音質にも期待が持てます。
Cleer+アプリで細かい調整が可能
Cleer ARC2は、専用の「Cleer+」アプリ(iOS / Android)でカスタマイズが可能になっています。
初回は、ARC2のアップデートが入りました。時間に余裕を持って実行しましょう。10分くらい放置してたら終わっていました。
ARC2のステータスを示すTOP画面(画像左)、イコライザーではARC2の音色を調整できます(画像右)
設定では各種オプションのON/OFFが調整できますが、その中でも面白い機能が「モーションコントロール」です。頭を振ることで、ARC2が動きを特定して、前の曲や次の曲へのコントロールを可能にします。
モーションコントロールの音楽コントロールを設定して、作業をしながら聴いてみました。頭を右に向けて戻せば「曲送り」、左に向けて戻せば「曲戻し」なので、手を触れたり声を出したりせずに、クイック操作が可能です。これがとても便利で、重宝しています。まさにウェアラブルデバイスだと感心しました。
ただ、後ろから声をかけられて振り返ったときにもこの機能は効くので、不意にスキップされた時はなぜ??と思いましたが……ああ、曲送りだと認識されたのか、と納得するのでした。
Cleer ARC2と、Oladanceとの音質比較
ながら聴きで高音質な製品は増えてきましたが、Cleer ARC2を買うまでの私の推しはOladanceです。割り切った仕様も私のスタイルに合っていました。では、両機種の音質や装着感はどう違うのか、どちらが好みか比較してみます。
まずは装着感。どちらもケースから取り出してスッと装着できる感覚は変わりませんが、Cleer ARC2はプロジェクト実行中にも形状に改善を加えるほどのこだわりのかけ心地。メガネをかけていても、邪魔にならない快適さがあります。(とはいえ、Oladanceも悪くないと思います)。
そして気になる音質です。どちらもカナル型のイヤホンを大きく超える大口径のドライバーを搭載しており、小型スピーカーのようなスペックです。それぞれiPhoneとBluetooth接続してみましたが、Oladanceはパワフルな音響、Cleer ARC2は極繊細な音響、といったメーカーごとの特色がよく出る結果でした。
Oladanceも長く使ってきたので贔屓目もありますが、お互い特色があっていいなと思います。
USB-Cの専用ドングルとペアリングして使ってみた
ワイヤレスイヤホンやワイヤレスヘッドセットの中には、専用のドングルが用意されている製品があります。わざわざ専用ドングルを使って聴く利点は次のようなものがあります。
- 使えないコーデックを追加できる
- Bluetooth不要で使える
- 接続が安定する
- ドングルを差し替えればペアリングなしで使える
また、デバイス側からは有線接続で認識されるため、接続にまつわるトラブルが比較的出にくいというのもあります。
数あるUSB-Cドングル付属の完全ワイヤレスイヤホンの中で、当サイトでレビューしたことがあるのは、EPOSのGTW 270 Hybridや、AnkerのSoundcore VR P10など。これらの製品の特徴は「ゲーム機での利用に特化している」こと。これらもやはり「低遅延」を売りにしています。
さて、Cleer ARC2 GAME Editionに付属したUSB-Cドングルにはどんな特徴があるでしょうか?
Cleer ARC2 GAME Editionの要、”USB-Cドングル”
Cleer ARC2の中でもGAME Editionにだけ付属するのが、USB-Cの専用ドングルです。指先でしかつまめないほど、極小のドングルです。
重さを計ってみると、たったの2.3gしかありません。小さすぎて軽すぎて、無くしそうで怖い。
この小ささでも、側面にはペアリングボタンがあり(写真左)、背面には技適の番号があります(写真右)。
無くしそうという不安を払拭してくれるのが、充電ケースのフタ側にある専用の収納場所です。USB-Cドングルとはマグネットで吸着するようになっているので、ちゃんと取り付ければ、落ちたり外れたりすることはありません。
USB-Cドングルを使うと、高音質を保ったまま低遅延を実現できるので、ゲーム向けのワイヤレスイヤホン・ヘッドホンではよく採用されています。当サイトでも過去に幾つかの製品をレビューしてきましたが、興味深いのは、それぞれ採用するコーデックが違うこと。EPOS製品ではaptX Low Latency、Anker製品ではLC3(次世代Bluetoothオーディオのコーデック)でした。
そして、Cleer ARC2 GAME Editionで採用されているのはaptX Adaptiveです。
それでは改めて、USB-Cドングルで使ってみましょう。Cleer ARC2は、同時待ち受け可能なマルチポイント接続に対応しているので、例えばiPhoneとBluetoothで接続しつつ、iPad ProとはUSB-Cドングル経由で接続する、ということが可能です。
※ペアリングし直す場合は、Cleer ARC2をケースに入れたまま、ケース上のペアリングボタンを押しっぱなしにして、近づけるだけです。
USB-Cドングルを使えば、高音質モードと低遅延モードを切り替え可能
Cleer ARC2のUSB-Cドングルには、側面にモード切り替えボタンがあります。長押しだとペアリングですが、このボタンを素早く2回押すと、内蔵のモードを切り替えることができます。
LEDが白く点灯しているときは低遅延モード(写真左)、LEDが赤く点灯しているときは高音質モードです(写真右)。
ゲームをするときには低遅延モード、音楽を聴くときには高音質モードを使いましょう。なお、低遅延時は59ms(ミリセカンド)が実現できるようです。映像と音のズレがほとんど認識できなくなるレベルですね。
iPad Proとドングル経由で接続する
iPad ProにUSB-Cドングル経由で接続してみました。もちろん使えます。iPad Proの大画面で映画を楽しんだり、ゲームをする際に活躍してくれます。
もちろん、USB-Cドングルを使わずに、Bluetoothで接続することも可能です。
MacBook Airとドングル経由で接続する
それから、USB-Cポートを搭載したMacBook Airにも直接接続してみます。これでMacを使っていてもaptX Adaptiveコーデックが扱えるようになります。最初にUSB-Cポートにドングルを挿すと許可を求めるメッセージが出ますが、もちろんこれは「許可」でOKです。(画像右)
私は、MacBook AirにUSB-Cドングルを挿しつつ、iPhoneとBluetooth接続して使うことが多いです。
Androidスマートフォンとドングル経由で接続する
さて、USB-Cドングルなので、Androidスマートフォンでも使えます。Google Pixel 7aに挿してみました。当然使えるんですが、ミュージックウィジェット上では「有線ヘッドフォン」で接続している、と認識されていました(写真右)。
ワイヤレスなのに有線?と不思議に思われるかもしれませんが、USB-Cドングルは、デバイス側(スマホやPC)から見ると有線で接続されたように認識されるんですよね。
ニンテンドースイッチとドングル経由で接続する
さて、GAME Editionなので、ニンテンドースイッチでも活用してみます。ニンテンドースイッチのUSB-Cポートは、USBオーディオに対応しているので、もちろんCleer ARC2 GAME EditionのUSB-Cドングルも認識されます。
ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダムの壮大な世界の中を走り回るのに、オープンイヤーのイヤホンは最高に心地よいです。最高やん……。
Lightning仕様のiPhoneでも専用ドングルは使えるか?
さて、iPhoneとは直接Bluetoothで繋いでいますが、コーデックはAAC止まり。専用ドングルでaptX Adaptiveによる高音質・低遅延が使えるなら使ってみたいものです。
そこで、Lightning OTGアダプターを使って専用ドングルを接続しようとしましたが……Audirect LTOC Lightning OTGアダプター(写真左)も、ddHiFi TC28i(写真右)もドングルの形状が本体につっかえてしまい、接続不可でした。
ならばと、Apple純正のLightning – USBカメラアダプタと、USB-A変換アダプタを使用して接続しました。電力不足のアラートも出ず、iPhoneから認識されました。これでiPhoneでもaptX Adaptiveが使える……!と喜ぶには、若干不恰好さが気になるところです。
見た目はともかく、iPhoneでもaptX Adaptiveが使える、Bluetoothで直接繋いだときよりも、段違いにいい音になりました!
ただ、ちょっと諦めが悪いタチなので、どうにかならないものかと、USB-Cの変換コネクターを探してみました。すると、将来的にも使えそうなアダプターがJTTから発売されていたではありませんか。
Lightning OTGアダプターと、USB-C変換コネクターを介するので、これはこれで不恰好のような気もしますが、ケーブルは無くなったので取り回しはずいぶん楽になりました。
とりあえず、持ち運ぶのに不便はありません。
使用したのは、こちらのUSB-C変換コネクターです。USB PD 240WやThunderbolt 3・4と互換性があるので、将来的にも使いやすいコネクターです。
そうこうしているうちに、iPhone 15シリーズが発売されました。
USB-CになったiPhone 15でも、USB-Cドングルは使えるか?
さあ、いよいよ登場しました。USB-Cに対応したiPhone 15シリーズです。私は今回iPhone 15 Pro Maxを購入しました。
Lightningポートのときは。取り回しに苦労しましたが、USB-Cポートに直結なら問題はありません。
もちろん接続してペアリングができます。
さらに、このUSB-Cドングルが優秀なのは、Apple純正のシリコーンケース越しに接続できるという点です。
ケースをいちいち外さなくても使えるというのは、普段使いという点において非常に重要です。
LE Audioの音質はどうなのか……?Pixel 7aとペアリング
Cleer ARC2は、次世代BluetoothオーディオのLE Audio(コーデックはLC3)に対応しています。そして、手元にはGoogle Pixel 7aがあったので、LE Audioを有効化してCleer ARC2とペアリングしてみました。
音質はですね……驚くことに、USB-Cドングルを使ったaptX Adaptive(高音質モード)のさらに上を行く、大迫力・高解像度の音質に変わりました。素人の耳にも明らかなほど音質が上がっていて、1つ上のステージに行った感じがあります。オープンタイプのヘッドホンを使っているような抜けの良さと、クリアで迫力のある音が、聴き飽きた楽曲でさえも、いつまでも聴いていられる気持ちよさを味合わせてくれます。
Cleer ARC2のポテンシャルの高さもあるでしょうし、LE Audioのポテンシャルもあったでしょうし、Pixel 7aとの相性もよかったのかもしれません。この音質は、ワイヤレスではなかなかお目にかかれない、目の覚めるような美しさでした。ちょっとこれはLE Audioの今後にも期待できそう。
Cleer ARC2 Game Editionのまとめ
ながら聴きイヤホンCleer ARC2、最高ですね。特にGAME EditionでUSB-Cドングルが付属することで、1台はスマホとBluetoothで繋ぎつつ、もう1台はPCやタブレットやゲーム機など、高音質・低遅延で楽しみたいデバイスで簡単に付け替えができます。マルチポイント接続の利点を最大限に活かすことができます。
今回のレビューでは触れていませんが、次世代ワイヤレスオーディオであるLE Audioにも対応しているので、長く使えそうです。
Cleer ARC2は、2023年10月6日(金)に予約開始、3モデルとも10月13日(金)発売になりました。
- オープン型でも十分すぎる高音質
- 次世代Bluetoothオーディオ規格「LE Audio」対応
- 用途別に特化した3つのエディション
- USBドングルを使った高音質・低遅延接続
- ケースがやや開けにくい
- ケースの充電状況がわかりにくい
- ワイヤレス充電には対応しない