車の中で聴く音楽は楽しい。密閉空間の中だと、反響効果でいつも聴いている音楽が違うものに聴こえる。ましてや最近はApple MusicやLINE MUSIC、Google Play Musicなどの定額制音楽聴き放題サービスのおかげで、新しい音楽との出会いが増えました。
しかし、家庭内でWi-Fiが使えるならともかく、音楽をストリーミングで聴くには超えなければならない壁があります。それは【ギガ不足】です。車の場合は移動しっぱなしで、公衆Wi-Fiすら使えません。通信事情は厳しくなります。
そこで、今回は自動車内で使える「車載Wi-Fi」に注目してみました。
本記事のもくじ
車載Wi-Fiとは
車載Wi-Fiと言っても、市販のモバイルWi-Fiルーターをシガーソケット経由でUSBで給電しながら使えばいい。そう思っていました。
よくよく調べてみると、Wi-Fiルーターを車載するには下記2つの問題点がありました。
問題点1. 車内温度に耐えられない!
これが最大の問題。車内温度は、特に夏場、車内はかなりの高温に達します。JAFのテストによれば、50度を超えるとか。
それではWi-Fiルーターは何度まで動作保証しているのでしょうか?例として、Aterm MR05LNで調べてみました。公式サイトの製品仕様によれば、動作保証環境が「温度 0~35℃」となっています。
MP02LN/MP02LSも、公式仕様によれば動作保証環境は「0~35℃」です。
NetGearのAirCardは、推奨動作温度「0℃〜35℃」ではあるものの、保管温度は「-10℃〜+60℃」となっており、車内に置きっぱなしにしておくことはできそうです。
メーカー問わず、既存のモバイルWi-Fiルーターを車内に常備しておくことは、故障のリスクを伴います。必ず環境仕様を確認しましょう。
問題点2. 電源がエンジンと連動しない!
車載するならできれば挿しっぱなしで運用したい。
モバイルWi-Fiルーターはバッテリーを内蔵しているため電源ONも電源OFFも「手動」。Wi-Fiルーターを車内に忘れていったら、電源が落ちるのを待つしかありません。
さらに、SSIDを晒したまま放置することになります。そして、次にエンジンをかけたときに自動でONになるとは限りません。
つまり、車載するWi-Fiデバイスには「バッテリーを搭載していない」ことが求められます。(車のエンジンON・OFFに連動する)
車載Wi-Fi用のデバイス&サービス
車載Wi-Fiを実現しようとすると、次の3つのデバイスorサービスが検討に上がります。※2020年11月現在
docomo in Car Connect
NTTドコモが展開する、車載Wi-Fiサービスが「docomo in Car Connect」です。
LTEのデータ通信をつかったWi-Fi環境が車内に作れる、定額使い放題車内向けインターネット接続サービス「docomo in Car Connect」をご紹介します。1日だけのご利用も可能で、動画や音楽などのコンテンツも必要なときに思う存分楽しめます。
docomo in Car Connect | サービス・機能 | NTTドコモ
docomo in Car Connect用の料金プランは下記の通りです。
1日 | 500円 |
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30日 | 1,500円 |
365日 | 12,000円 |
データは制限なしで使い放題、事務手数料も解約違約金もなく、非常に使いやすくなっています。対応車両・機器は、下記のいずれかになります。
- パイオニア製車載用Wi-Fiルーター
- パイオニア製カーナビ(サイバーナビ AVIC-CQ911/CL911/CW911/CZ911系)
- 日産車
車載用Wi-Fiルーター DCT-WR100Dはシガーソケットに挿すだけの簡単です。動作温度が–10℃~+60℃となっていて、寒い日も炎天下の日も問題ないようです。
サイバーナビを選ぶ際には、ネットワークスティックが同梱されたモデルを選んでください。末尾に「-DC」がついた製品がネットワークスティック同梱モデルです。ネットワークスティックは後から買うこともできますが、同梱モデルは1年間の無償使用権が付いており12,000円分お得、価格差を考えると実質無料です。
AVIC-CQ911-DCは、9V型ラージサイズの大画面カーナビユニットです。
AVIC-CL911-DCは8V型ラージサイズのカーナビユニットです。
AVIC-CW911-DCは7V型で200m幅のワイド画面のカーナビユニットです。
AVIC-CZ911-DCは7V型のカーナビユニットです。
ピクセラ PIX-MT110/PIX-MT100
PIX-MT110/PIX-MT100はLTEに対応したSIMフリー端末で、格安SIMを挿して運用することが想定されています。
USBポートに挿すだけで動作するので、PCだけでなく、コンセントやモバイルバッテリーに直挿しすることも想定されています。つまり、車でも使えます。
※PIX-MT100は2016年発売、PIX-MT110は2020年11月6日発売の製品です。
ただ、電源連動という点はクリアしますが、メーカーWebサイトによれば、「許容動作温度 : 0℃~35℃」となっており、問題点1がシビアで、クリアできないまま。ただ、真夏と真冬には乗り降りするたびに持ち出すという回避方法もあります……。
ワイモバイル 404HW
ワイモバイル公式サイトではすでに「過去の製品」となっています。現在は販売されていません。
車載専用のWi-Fiルーターとして発売されただけあって、推奨動作温度-10℃〜35℃、推奨保管温度-20℃〜70℃となっています。車内温度問題はクリア。バッテリーも搭載していないので、電源連動もクリアします。
ただし、SIMロック解除ができないため、SIMはワイモバイル限定になること、すでに販売終了しているため、メルカリやヤフオクで見つけることになります。(2020年11月時点で、1,000円台で取引されています)
ワイモバイル 404HWで車載Wi-Fiデビュー
挿しっぱなしでルーズに運用したいので、404HWを選択しました。
中身が見えるパッケージになっている。通信機器としては珍しい。
内容物は、クイックスタートなどの紙類に、404HW本体。
想像していたよりも大きい印象だ。自動車のシフトレバーのようにも見えます。
USBポートが一つあって、ここから1Aで充電できるようです。シガーソケットを一つ潰すので、そこから電源を取っている人には安心材料ですね。
USBポートの反対側にmicroSIMスロットと、リセットボタンがあります。蓋の裏面には、SSIDやWi-Fiキーが記載してあるので、車の中で慌てる心配はありません。
さて、本体は安価で入手できたものの、404HWには大きな問題があります。ワイモバイルのSIMしか使えないので、格安SIMでの運用ができないのです。
SIMの選択肢は一つだけ
ワイモバイルはNTTドコモやau、ソフトバンクと同様に自前で設備を持つMNOブランド。格安SIMを扱うMVNOとは違う。格安SIM対抗のためか、ソフトバンクの元でデータ1GB 980円の格安プランを打ち出しています。
さらにそのプランを、Yahoo!プレミアム会員向けに500円のプランとして販売しています。この1GBプランの特徴は「2年縛りが無い」こと。1ヶ月で解約しても違約金は発生しません。※本記事で紹介しているプランは終了しています。
申し込みの翌営業日に出荷の連絡があったのだけど、クロネコメール便だったせいか届くまでに中1日の間がありました。いつまで経っても有明の配送センターから動かないのでやきもきしました……。
入っているのは、SIM入りのパッケージだけ。もう少し小さく送ってもいいのでは……。
「4G音声」と書いてあるけれど、プランは後から選択できるので安心していいです。
SIMが届いてもすぐ使えるわけではありません。Webからご利用開始お手続きを始めましょう。
1GBの通信量を使い切った後は、128kbpsの低速通信になります。追加容量は500MBで500円(税別)。
オンライン申し込みで免許証の画像を提出して審査を受けます。翌営業日には承認されたのだけど、SIMの申し込みからここまで実質1週間近くかかりました。やや面倒ですね。
実際に車載してみる
シガーソケットに挿して、HUAWEIのボタンを長押ししたら電源が入ります。電源投入時には赤く光りますが、正常に接続できれば緑色に変わります。
ここから先は通常のWi-Fiと変わりません。あとは、スマホのWi-Fi設定からSSIDの「404HW-******」を選択してパスワードを入れるだけ。(メールアイコンが点灯しているときはSMSが届いています。404HWにWi-Fi接続した後に、192.168.128.1にアクセスすればSMSが読めます)
しばらくドライブのたびに使ってみたけど、問題なく使えています。ただ、電源ONだけ手動というのが煩わしい(車のエンジンを切ればOFFになる)。次期モデルがあるのか分からないけど、その際には自動で電源を投入できるようにしてほしいところです。
まとめ
今後、eSIMや5Gの普及に加え、HONDA eやSONY VISION-Sといったeモビリティの進化で、車載Wi-Fiの存在感はますます増していくことになるでしょう。まずは、docomo in Car Connectの今後に注目です。




