完全ワイヤレスイヤホンは、ハイレゾ時代へ……
先日発売したSONYの完全ワイヤレスイヤホン WF-1000XM4は、他社に先駆けてハイレゾ・ワイヤレスコーデックのLDACに対応しました。いよいよ完全ワイヤレスイヤホンもハイレゾ世代に突入です。
Apple Musicもロスレス音源が標準になってきたことですし、Appleも次期AirPods Proで高音質化してくれたりするといいんですけど……。
さて、今回紹介する完全ワイヤレスイヤホンは、どんな製品なのでしょうか……
Bowers & Wilkins初の完全ワイヤレスイヤホン登場!
Bowers & Wilkinsといえば、高級スピーカーブランド。ワイヤレスヘッドホンのPX7やワイヤレスイヤホンのPI4はありましたが、完全ワイヤレスイヤホンのラインナップはありませんでした。
そんなBowers & Wilkinsから2021年6月、初の完全ワイヤレスイヤホン「PI7」と「PI5」が登場しました。フラッグシップモデルのPI7は、なんと4万円超えの高級品。思わず躊躇してしまう金額ですが、高音質+「ある機能」が気になって購入してしまいました。
PI7はホワイトとチャコールの2色展開ですが、ホワイトは遅れて発売されるということで、チャコールを購入してみました。
Bowers & Wilkins PI7をレビュー
こちらがPI7のパッケージ。白を基調にしたシンプルなデザインです。
パッケージはコンパクトながら、やや厚みがあります。
内箱を開くと、PI7の充電ケースがお目見えです。
付属品は、PI7と充電ケース、交換用イヤーピース(S/L)、 USB-C to 3.5mm オーディオケーブル、USB-C to USB-C 充電ケーブル、クイックスタートガイド他、となっています。
充電ケースの上には、Bowers & Wilkinsの表記。
底面にはUSB-Cポートがあります。充電用以外に、もう一つの使い道があります。のちほど……。
USBケーブルでの充電も可能ですが、最近の完全ワイヤレスイヤホンはQiワイヤレス充電が可能な機種が多く、PI7もその例に漏れず、ワイヤレス充電が可能です。
※写真で使用しているワイヤレス充電パッドはB&Oの製品です。レザーのパッドで高級感があってオススメです。
PI7の充電ケース、WF-1000XM3のケースに似ているなと思って、比較してみました(写真右)。こうして比べてみると、WF-1000XM3はずいぶん大きいですね(PI7がコンパクトと言えるのかも)。
PI7の重量は62.3g。見た目の高級感のわりには、持った感触が軽く、扱いやすいです。
充電ケースのフタを開けたところ。左右のイヤホンの真ん中にペアリング用のボタンがあります。
フタを開けると、前面のLEDがグリーンに点滅します。バッテリー残量が40%以上あればグリーン、20%以上だとイエロー、未満だとレッドになります。
イヤホンを取り出します。ゴールドのパーツがつまみやすく、取り出しやすくなっています。
PI7は写真映えする高級感があり、所有欲をそそります。
左右のイヤホンを合わせた重量は15.4g。完全ワイヤレスイヤホンとしては軽すぎず重すぎずと言ったところでしょうか。
イヤホンの外側はタッチセンサーになっています。高級オーディオセットのボリュームつまみのようなスピン加工とダイヤカット加工、いちいち手間をかけすぎて、最高!という感想しかありません。
イヤホン上部に備えられたマイクにも、ゴールドのパーツが使用されており、高級感マシマシです。なお、内蔵されたマイクは左右で3つずつ。ノイズキャンセリングと外音取り込みの品質に期待がかかります。
イヤホンを充電ケースに収めた際には、イヤホンのつまみだけが見えるようにデザインされています。
充電ケースを開いた状態もサマになります。
それでは、実際の装着感はどうでしょうか。
PI7はがっちり固定、装着感も良い
PI7を耳に装着する際には、耳に挿入後、つまみを少し下に回して固定します。
つまみの分、少し耳からははみ出しますが、さほど目立つものではありません。
慣れると、耳に入れる→下向きにひねる、で素早く装着・固定できます。装着感は良好で、このまま走っても全く問題ありません。
iPhoneとペアリングしてみたところ……音質は?
それでは、まずはiPhone 12 Pro Maxとペアリングしてみましょう。
iOSとAndroid向けにBowers & Wilkins Headphonesアプリが用意されているので、バッテリーの細かい残量を知ったり、ノイズキャンセリング機能の設定を行うことができます。
アプリに「サウンドスケープ」という機能が内蔵されています。これは自然の環境音をリピートして流してくれる機能です。スリープタイマーもあるので、このまま寝落ちしたい人もうってつけです。
さて、肝心なのは音質です。Apple Musicのロスレス音源を聴いてみました。
開放感のある空間に、どっしりとした響きの低音と、透明感のある伸びやかな高音が同居しています。解像感も高く、完全ワイヤレスイヤホンとしては最高の域にある音質です。
スペック表をよく読んでみたところ、バランスド・アーマチュアと9.2mmのダイナミックドライバーを採用したハイブリッド構成でした。
ただ、バッテリー駆動時間は公称約4時間ということで、それなりに電力を食うようです。充電ケースを併用するので、それほど気にならないとは思いますが、長時間使う予定のある方は注意してください。
PI7はハイレゾ・ワイヤレスコーデック「aptX HD」に対応!
さて、PI7はハイレゾ・ワイヤレスコーデックの一つである「aptX HD」に対応しています。私の知る限りでは、完全ワイヤレスイヤホンでaptX HDに対応したのは本製品が初めてのはず。(これ以前に存在していたらTwitter(@makkyon_web)で教えてください)
Androidを搭載したデジタルオーディオプレイヤーのShanling M6とペアリングしてみたところ「aptX-HD」の表示が表れました!音質は完全ワイヤレスイヤホンと思えないほどの解像感と音圧です。完全ワイヤレスは次のステージに進んだ!と嬉しくなります。
もちろん、Androidスマートフォンで採用が進んでいる「aptX Adaptive」にも対応しています。エントリーモデルのRedmi Note 10 ProでaptX Adaptiveが有効になりました。
iPhoneでペアリングして音楽を聴いたときも、その音質の良さに驚きましたが、高性能オーディオプレイヤーにaptX HDが加わると、まさに次元が変わったように音質がグレードアップします。ついに完全ワイヤレスイヤホンもここまできた!
ノイズキャンセリングは透明感重視?
最近の完全ワイヤレスイヤホンには必須の機能となりつつあるのが、ノイズキャンセリングと外音取り込み機能です。
新宿駅の東西自由通路でノイズキャンセリングを有効にしてみました。圧迫感もなく、不自然な雑音もなく、周辺の音がスッと消えるようにノイズキャンセリングが効いています。AirPods ProやWF-1000XM4ほどではないものの十分な効き目があります。
また、PI7のノイズキャンセリングには「自動」のモードがあります。これを有効にしておくと、周辺のアナウンス等は適度に通しつつ、雑音をカットするというインテリジェントな動作を行ってくれます。どちらかというと、この「いい感じ」なノイズキャンセリングの方がPI7の本領かもしれません。
外音取り込み機能(アプリ上では「アンビエント・パススルー」)も使ってみました。アプリで効き具合を調整できますが、取り込み量を最大にすると、周辺の音はよく聞こえるものの、マイクで取り込んでいる感じが出ます。取り込み量はデフォルト(中間)にしておくのがちょうど良かったです。
ノイズキャンセリングも外音取り込みも、AirPods ProやWF-1000XM4のような極端なオン・オフというよりも、音楽を快適に聴くための「ちょうどいい」調整をしてくれているように感じました。
PI7の充電ケースはメディアストリーミングに対応!!!
ここまでのレビューでPI7の完全ワイヤレスイヤホンとしての完成度の高さは分かってもらえたと思います。しかし、私がPI7を買った目的はこれだけではありません。注目は「充電ケース」の機能にあります。
付属品にUSB-C to 3.5mmステレオケーブルがあります。これを使います。
充電ケースにUSB-Cを挿し、イヤホンジャックをMacBook Airのイヤホン出力に繋いでみましょう。すると、Macとペアリングしていないにも関わらず、PI7の充電ケースを通して、イヤホンから音楽が聴こえるのです。
このときPI7自体はiPhoneとしかペアリングしていません。実はiPhone以外に、PI7は充電ケースともペアになっていて、充電ケースとトランスミッター(送信機)として、音を飛ばすのです。
macOSのシステム環境設定からサウンド出力を見ると、PI7の充電ケースは「外部ヘッドフォン」として認識されています。
つまり、プレイヤー側に3.5mmのイヤホンジャックさえあれば、ペアリング不要で完全ワイヤレスイヤホンが使えるのです。
論より証拠、素のままではBluetoothイヤホンが使えないニンテンドースイッチのイヤホンジャックに差し込めば、完全ワイヤレスイヤホンとして使えます。
Fire HD 10 Plusでも使えます。
なんだったら、iPhoneにLightningで接続したUSB DACからだって出力できます。接続経路がややこしいことになっていますが。
USB DAC経由じゃなくても、ただの変換アダプターでも問題ありません。
とはいえアナログ出力だと、プレイヤー側の音量をかなり大きくしないと、ちゃんと聴こえません。
USBオーディオ出力でメディアストリーミング!
充電ケースをUSB同士で接続すれば、PI7はUSBオーディオとして認識されます。アナログで接続するよりも、音に力が出ました。
アプリからPI7を確認すると、充電ケースとPI7はaptXコーデックで接続していました。
iPhoneともUSBオーディオで接続してみましょう。OTGケーブルが必要なので、他社製ですがFiiOのLT-LT1を使ってみます。Lightning to USB-Cのショートケーブルです。
Lightningとしてはかなり高価ですが、選択肢はほとんどありません。なお、両メーカーとも動作保証外の機器同士の接続なので、自己責任で行いましょう。
iPhoneのLightningポートに直結します。PI7はiPhoneではなく充電ケースと接続しており、音楽が流れます。
出力先の表示を見ると、Bluetoothではなく、AirPlay2機器とともにスピーカーとして認識されていることが分かります。
アプリ上で確認してみると、接続コーデックは「aptX」になっていました。
ペアリング済みのiPhoneからわざわざ充電ケース経由で聴くケースは無さそうですが、友人のiPhoneに繋いでオススメの音楽を聴かせてもらう、というシチュエーションはありそうです。
iPhoneやMacで聴く限りは、充電ケースを経由する方が音はややいいかな?といったところ。ただ、ケーブルによる接続が必要なので可搬性は落ちます。外ではiPhone(Bluetooth)で、家ではMac(充電ケース経由)という使い方が良いかもしれません。
PI7と似た性質を持つ製品にEPOSの完全ワイヤレスイヤホンGTW 270 Hybridがあります。USB-Cドングル付きで様々な機器で使えますが、PI7はアナログでもデジタルでも繋げるということで、GTW 270を上回る汎用性を実現したといえます。
まとめ
PI7の音質は、数ある完全ワイヤレスイヤホンの中でも最高の部類にあると言えます。音の方向性はAirPods Proに近いので、AirPods Proの音質は好きだけど、もっと低音を効かせたい・もっと高音質がいい、と考えている方にはうってつけです。
PI7を使っていて感じたのは「いちいち調整しなくても、いい感じにノイキャンや外音取り込みしてくれて、高音質で聴かせてくれる」ということ。気軽に音楽を楽しむのに、こんなに気の利いた仕組みはありません。
また、充電ケースによるメディアストリーミングは、テレビやタブレットでも使いたいという贅沢な欲求にも応えてくれるでしょう。マルチペアリング機能を持つ製品もありますが、ケーブルで繋ぐ分かりやすさにはかないません。
PI7の弱点らしい弱点といえば、「それなりに高価」という点くらいでしょうか……。