骨伝導イヤホンは音が悪い、は昔の話
骨伝導イヤホンが進化しています。ShokzのOpenRun Proは低音エンハンサを2基内蔵し、音に厚みを持たせました。オーディオテクニカのATH-CC500BTで軟骨伝導を採用し、aptX HDにも耐える高音質を実現しました。
そして、今回紹介するAVIOTのOpenpiece Elite WB-E1Mは、上記2機種とはまた違った方法で高音質を実現しているのです。
AVIOT Openpiece Elite WB-E1Mをレビュー
こちらが、AVIOT Openpiece Elite WB-E1Mのパッケージです。
Openpiece Elite WB-E1Mについての詳しい製品情報は下記から。
今回購入したのは、指向性ECMブームマイク同梱モデルです。
ちなみに、このパッケージかなり分厚くなっています。
上から見てみると2層になっていますね。これはなぜかと言うと……
ECMブームマイクは取り外し可能で、別売り対応
今回購入したOpenpiece Eliteは「指向性ECMブームマイク同梱モデル」とあるように、Openpiece Eliteと専用ブームマイクが別々の製品として存在します。つまり、今回のパッケージはセット商品なわけです。
2つの製品をセットにできるこの箱が、同梱モデルのオリジナルということですね。
というわけで、こちらが単品のOpenpiece Elite WB-E1です。
当然、単品の方が安価に買うことができます。予算的に合わないようであれば、こちらを買うのもアリでしょう。
そして、後からでもマイクを追加できるため、指向性ECMブームマイク(専用ブームマイク)は単品でも買うことができます。
さて、その指向性ECMブームマイク、後付けで購入できるのは便利なんですが、トータルの価格で見るとどちらがお得なのでしょう?
指向性ECMブームマイク、同梱モデルと後付け購入、どちらがお得?
AVIOTのオンラインモールでの価格を確認してみましょう。(2023年3月時点)
製品 | 税込価格 |
---|---|
AVIOT WB-E1M 指向性ECMブームマイク同梱モデル | ¥ 23,870 |
AVIOT WB-E1 | ¥ 21,890 |
AVIOT WB-E1用単品ブームマイク | ¥ 3,980 |
同梱モデルだとセット価格23,870円、後付け購入だと合計で25,870円。約2,000円の差が出ます……悩みますね。マイクを使う目的であれば、少し無理をしても先に購入しておく方がオススメになります。
まずは、Openpiece Elite WB-E1をレビュー
パッケージを開けてみると、黒いハードケースがお目見え。
Openpiece Eliteの形状に合わせた、特殊な専用ケースになっています。
指で叩いてみると、軽い音が鳴るハードなケースです。
こちらがOpenpiece Elite WB-E1Mの内容物です。本体以外に、指向性ECMブームマイク+ブームマイク用風防、USB Type-Cケーブル、ユーザーマニュアル、製品保証登録カード、ケース、USBキャップ、となっています。
そして、Openpiece Elite WB-E1です。今回購入したのは、メタリックブラックです。カラーバリエーションとして、チタニウムシルバーやブロンズゴールドも存在しますが、いずれも遅れて4月下旬発売ということで、メタリックブラックを購入しました。
美しい曲線で構成されています。メタリックブラックというカラーですが、光の当たり方によってグラファイトのようにも見えます。
Openpiece Eliteの操作は、両耳の上にあるボタンで行います。
Openpiece Eliteの重量は、ブームマイクなしで約29.4g、ブームマイクありで約35.4g。骨伝導イヤホンとして、十分に軽いです。
次にOpenpiece Eliteを装着してみましょう。
Openpiece Eliteの装着感は?
Openpiece Eliteはチタニウムバンドで構成されています。しなやかで軽く、曲げにも強い素材です。この素材のおかげで、付けるときも外すときも、スムーズです。
2つのユニットで耳をまたぐように装着します。
メガネをかけた状態でも、特に干渉しません。数時間かけていても痛くなるようなことはありませんでした。
肌が触れる部分にはシリコンパッドがあり、直接金属が触れるようなことはありません。
操作用のボタンは耳の後ろ側に位置し、操作時はユニットを押さえながら押す必要があります。慣れるまでは、ちょっと手間取るかもしれません(私はもう慣れました)。
締め付けすぎず、緩くなりすぎず。ふだん、Shokzの製品を使い慣れている私としては、特に違和感なく装着できました。
意外なハイブリッド構成、その音質は……?
驚きなのは、骨伝導イヤホンなのにハイブリッド構成になっていること。通常、イヤホンでのハイブリッド構成といえば、バランスド・アーマチュアドライバーとダイナミックドライバーの組み合わせです。
ところが、Openpiece Eliteは、骨伝導ユニットと、バランスドアーマチュアのハイブリッドという意外な組み合わせ、音の出ところが2箇所になってます。
これで、音はどう聞こえるの……?と興味津々でしたが、骨伝導特有のちょっとこもった感じがなく、高音が綺麗に抜けていきます。ピアノの音も綺麗に響きますね。
しばらく使ってみた感じ、ShokzのOpenDotsに近い感じがありました。
音量を上げてもブルブル震える感じは少なく、骨伝導イヤホンというより、オープンタイプのイヤホンとして楽しんでいるような気持ちになります。
ただし、そのぶん音は漏れやすくなるわけで、Openpiece Eliteには「音漏れ抑制モード」があります。音漏れ抑制モードは、アプリ上から操作するか、右耳側のマルチボタンを2回押すことで切り替わります。
音漏れ抑制モードをオンにすると、高音がややカットされた感じになります。感覚的にはバランスド・アーマチュアドライバーがオフになったのかと思いました。音楽の楽しみ方はやや落ちますが、そこは音漏れとのトレードオフでしょう。
Openpiece Eliteと、OpenRun Proとの音質はどう違う?
骨伝導イヤホンといえば、ふだんはOpenRun Proを使っています。音質はどう違うのでしょうか?
Adoの「Tot Musica」を使って聴き比べてみました。澤野弘之氏の手がけた重厚な楽曲を、Adoが力強く歌い上げる楽曲でです。ONE PIECE FILM REDの劇中歌として、クライマックスの戦闘シーンを盛り上げた曲なので、多くの方が聴いているでしょう。
この楽曲、OpenRun Proは低音を豊かに鳴らします。高音は伸びきれずこもった感じが出ているものの、骨伝導イヤホンとしては十分すぎる音質です。
Openpiece Eliteは、冒頭から高音の抜けがよく、明らかにバランスド・アーマチュアドライバーの良さが活きています。一方でOpenRun Proほどの迫力はなく、低音域はマイルド。一長一短とも言えますが、どちらが音がいいか、と言われればOpenpiece Eliteを推します。
※ちなみに音漏れ抑制モードにした場合は、BAドライバーがカットされたような音になり、全体的に物足りない音になります。
Openpiece Eliteは“IPX5”の防水性、生活の中では十分?
Openpiece Eliteの防水性能はIPX5。水流が当たったりしても問題のないことを示す防水等級です。どんなシーンが考えられるでしょうか?シャワーを浴びているとき、雨の中を走るとき、そんなシーンでも問題なく使えるはずです。
気になるのは、充電用のUSB-Cポートです。……が、ここはキャップレス防水仕様になっていて、このままで防水状態なのです。便利ですね。※充電する際には中が乾いている状態で行いましょう。
ちなみに、外付けブームマイクは非防水です。濡らさないようにしてください。
Openpiece Eliteは2台のマルチポイント接続可能
ワイヤレスイヤホンとしては必須の機能となりつつある、2台同時待受可能な「マルチポイント接続」ですが、Openpiece Eliteでも対応します。
iPhoneとMacや、私用のiPhoneと業務用のiPhoneなど、組み合わせて使うことができます。
ただ、iPhoneで音楽を聴きながら、Mac側で(ゴミ箱にファイルを捨てたり等)操作音が鳴ったりすると、音楽が中断してストレスになったりするので、使わないときは切断しておくといいでしょう。
専用アプリ「AVIOT SOUND ME」で出来ること?
Openpiece Eliteには専用アプリとして「AVIOT SOUND ME」が用意されています。( App Store / Google Play )
Openpiece Eliteとのペアリング後に、利用可能になります。
利用できる機能は、高音質モードと音漏れ抑制モードの切り替え、イコライザー機能、ゲーミングモード設定(低遅延)、GPSによる位置情報履歴の確認、となっています。
デザインも洗練されていて、使い勝手のいいアプリでした。
Openpiece Elite 専用ブームマイクをレビュー
Openpiece Eliteは、左耳側に内蔵マイクがあります。これ単体でも使えますが、より明瞭に会話ができるように外付けのブームマイクが用意されています。
こちらが専用ブームマイク AC-BM1。
ユーザーマニュアルと、ブームマイク、風防が付属しています。
外付けブームマイクの接続方法はUSB-Cで、さらにその下にもUSB-Cポートがあります。パススルーで充電できるようになっています。
単一指向性のあるマイクが採用されています。
風切り音が低減できるので、付属の風防を被せておきましょう。
Openpiece Eliteに接続した状態。コネクタ周りを包み込むような形状をしています。しっかり接続されているので、不意に落ちるようなことはないでしょう。緩くもなく固くもなく、いい精度で作られています。
一直線になっているブームマイクですが、自由に曲げられます。
口元に持ってこれるよう、曲げて調整します。
さて、外付けブームマイクの準備が整ったところで、気になるあの製品と比較して見ましょう。
Shokz OpenCommと比較してみる
骨伝導イヤホンを使う上で、必ず検討に上がるのがShokz製品。この分野の王とも言えるブランドで、特にブームマイクが付属したOpenComm(写真右)は、Openpiece Eliteとはライバル関係にあります。
まずは、AVIOT Openpiece EliteとShokz OpenCommにどんな違いがあるのか、製品仕様で比較してみましょう。
AVIOT Openpiece Elite | Shokz OpenComm | |
---|---|---|
ドライバー | +バランスドアーマチュア | ダイナミック型骨伝導ドライバー第7代骨伝導ドライバー |
対応コーデック | AAC / SBC | SBC |
ブームマイク | 指向性ECMブームマイク | DSPノイズキャンセリングブームマイク |
マルチポイント接続 | 2デバイス | 不可 |
重量 | 約35.5g ※ECMブームマイク含む | 33g |
防水 | ※ブームマイクは対象外 | IPX5IP55 |
充電ポート | ※キャップレス防水対応 | USB Type-C磁気誘導ポート(独自) |
バンド | チタニウムバンド | フルチタンフレーム |
バッテリー容量 | 145mAh | 170mAh |
連続再生時間 | 12時間 | 8時間 |
連続通話時間 | 6時間 | ※入力専用で使った場合 | 16時間
充電時間 | 約1.5時間 | 1時間 |
急速充電 | 10分の充電で最大60分連続再生 | 5分の充電で最大2時間の通話 |
専用アプリ | AVIOT SOUND ME | なし |
税込価格 | 23,870円 | 22,800円 |
購入する | 購入する |
Openpiece Eliteの方が新しい分、マルチポイントやアプリ対応など全体的に機能が上、という印象があります。次は装着感です。
ブームマイクの位置が、耳から下に伸びるOpenpiece Eliteと、耳から伸びているShokz OpenCommですが、どちらも使い勝手はあまり変わらず。とはいえ、見た目には下の写真を見てもらうと分かる通り、Openpiece Eliteのブームマイクは大ぶりです。
使わないときは回転して収納できるOpenCommは便利ですし、ブームマイクが取り外せるOpenpiece Eliteも便利です。これも一長一短ですね。
Openpiece EliteとOpenCommのマイク品質を比較してみた
Openpiece EliteとOpenCommのマイク品質をチェックしてみました。
Openpiece EliteとOpenCommを含む、次のマイクで比較してみました。
- iPhone 14 Pro Maxの内蔵マイク
- AirPods Pro(第2世代)のマイク
- Shokz OpenCommのブームマイク
- Openpiece Eliteの内蔵マイク
- Openpiece Eliteとブームマイク
実際に比較してみた音声は、下記のYouTube動画で聴くことができます。
収録した音声の質が良かった順に並べると次のようになりました。
- Openpiece Eliteとブームマイク
- Shokz OpenCommのブームマイク
- AirPods Pro(第2世代)のマイク
- iPhone 14 Pro Maxの内蔵マイク
- Openpiece Eliteの内蔵マイク
Openpiece Eliteとブームマイクの組み合わせは、かなり良かったです。一方で、Openpiece Eliteに内蔵されているマイクは質が悪く、非常時以外には使えないと感じました。
使い続けて2ヶ月余り……ちょっとだけ不満点も
Openpiece Elite WB-E1M購入から2ヶ月以上、テレワークで日常的に使っています。長い間使っていると、いくつか気になる点がわかってきました。
USB PDの充電器で充電すると、充電されないことがある
付属のUSBケーブルを使って充電する分には問題ありません。ただ、汎用のUSB-Cケーブルを使って、USB PDの充電器で充電すると、充電されないことがありました。汎用的なケーブルと充電器ではありましたが、どうもUSB PD規格の充電器だと充電が始まらないようでした。逆に、USB-Aで挿すUSB充電器であれば、問題なく充電できました。
充電確認用のLEDが見づらい
左耳側のユニットに充電確認用のLEDありますが、見えづらいため、充電状況が分かりにくいです。
ペアリングが切断されことがある
これは発生条件が明確でないのですが、数秒だけペアリングが切断することがあります(感覚的には毎日3-4時間使って週1回あるかないか)。数秒で自動再接続するので、慌てず何もしなくていいんですが、数秒だけスピーカーに切り替わったりするので、焦ります。
外付けブームマイクが内蔵マイクに切り替わることがある
前述した3つの不満点は、使用時に気をつければいいだけなんですが、最後の1点はわりと致命的です。
まず前提として、マイク比較で分かる通り、Openpiece Elite WB-E1Mの内蔵マイクは酷い音質で、通話するなら外付けブームマイクは必須です。個人的には内蔵マイクを使うシーンは無いと思っています。
ところが通話中に、外付けブームマイクが内蔵マイクに切り替わってしまうことがあるのです。使ってる本人は分からず、通話先から「音声が急にこもったけど?」「音が悪くなったけどどうした?」などと指摘が入って、初めて気付かされるのです。対処方法は、外付けブームマイクを一度抜いて、再度接続するだけ。これで外付けブームマイクが再び使えるようになります。
問題なのは、使っている本人が気付けないこと。もし、通話先が我慢して聞き取ってくれているのであれば、Openpiece Elite WB-E1Mを使っている意味がありません。
AVIOTのサポートに問い合わせてみたところ、ファームウェアアップデートにより解消できるそうです。ただ、このファームウェアアップデートがいつ配信されるか明言されていません。この記事に追記している時点で、最新アプリ(バージョン1.0.26)で配信されているバージョン1.1では解決していません。
AVIOT Openpiece Elite WB-E1Mのまとめ
ブームマイクが着脱可能で、音楽用にも通話用にも特化できる仕組みは、両方使いたい人にとって最高の仕様です。また、骨伝導とバランスド・アーマチュアのハイブリッド構成という異色の組み合わせは、意外なほど快適な音楽リスニング体験をもたらしてくれました。
汎用的なUSB-Cポートで充電ができる上、防水も備えており、弱点のない骨伝導イヤホンと言えるでしょう。ここまで読んで納得していただけたなら、絶対に買いです。
- 骨伝導とバランスド・アーマチュアの組み合わせで高音質を実現
- ブームマイクで高音質な通話が可能
- ブームマイクは着脱が可能、別売りでも購入できる
- 軽量仕上げで、付け外しも快適
- 高級感のあるデザインで、ビジネス仕様にも最適
- 外付けブームマイクは単品だとお高め(同梱版がオススメ)