Kinera……そのブランドの名前はしばしば聞いていましたが、印象としては独特のカラーリングと特徴的なデザインを持つ「ちょっと変わったイヤホン」。
ここ数年は完全ワイヤレスイヤホンに意識を持っていかれていたので、有線イヤホンの話題に疎かったのですが、縁あってお声がけいただき、レビューする機会を得ました。さて、Kineraってどんな製品なんでしょうか……(まっさらな気持ち)。
北欧神話の女神「Freya」を冠したKineraのイヤホン
届いたKinera Freyaの製品パッケージにいきなり度肝を抜かれます。なんだ、このデザイン……(戸惑い)。流れるような模様が描かれた六角形のパッケージ、とてもイヤホンには見えない、化粧品か高級なチョコレートでも入っているようなデザインです。

Kinera Freyaをレビュー
背面はあずき色で、製品仕様や内容物一覧が書かれています。

パッケージの裏面には、PartnersとしてKinera Freyaイヤホンを構成する企業・ブランドが記されています。バランスド・アーマチュアはKnowlesやSonion製のものを、イヤーピースにはfinal製のものを採用しているようです。

Kineraが本製品において大事にしているのは、エレガントに作られていること、完璧であること、のようです。意気込みはここまででも十分に伝わってきます。

フタを開けてみても、封入物もすべて六角形で作られており、徹底しています。

男性の私がレビューするのは場違いなのでは……?と思わせるほどに、女性的で優雅な内容です。

クッション材の中には、各種パーツやケースなどの付属品が収まっています。

そして、特に目を引くのが、Kinera Freyaイヤホン。この輝きは宝石のような、高級な工芸品のような美しさです。

とはいえ、見るべきはKinera Freyaイヤホン以外にもたくさんあるのです。まずはケースを見ていきましょう。
女性向け?コスメのような、イヤホンらしからぬストレージバッグ
イヤホンのほかに目を引くのは、このストレージバッグです。

柔らかな素材と、あえて縫い目を見せるデザインで、とてもイヤホンが入っているように見えないストレージバッグです。フタを取ると、中にはケーブルやアダプターが収まっていました。

ストレージバッグの内部はマイクロファイバーで保護されていて、イヤホンを傷つけることがありません。気配り力に溢れています……。
ここまででも十分に高級感がありすぎるのですが、ガジェットとしての常識からかけ離れたところにある感情に戸惑いを隠せません。
付属品充実?デジタルもアナログもほぼほぼカバー
こちらが付属品のすべてです。有線イヤホンとしては、付属品が多く見えます。

内容物は多岐にわたっており、下記のものが付属しています。
- Kinera Freya本体
- 0.78mm 2pinケーブル
- Lightning アダプターケーブル
- USB Type-C アダプターケーブル
- 3.5mm to 6.35mm アダプター
- ノズルブラシ
- ストレージバッグ
- イヤーチップ
- ユーザーマニュアル
ヘッドホンなどで使用できる6.35mmアダプターが付属しているのが珍しいですね。Kinera Freyaの自信の現れでしょうか。
付属のイヤーピースは、finalのTYPE E
そして、パッケージ背面にも記載してあったように、finalのTYPE Eイヤーピースが付属していました。TYPE Eイヤーピースの特徴は、傘部分と軸部分とで異なる硬度のシリコンを採用して装着性を高めていること。
また、軸色がライトグレー(SS/M/LL)とダークグレー(S/L)と交互に分かれており、隣り合ったサイズを間違えない、という親切設計のイヤーピースです。

メーカーサイトによれば、快適な装着性を実現することで、低音域の改善や遮音性の向上、高音域の刺激音を低減することが可能、とあります。こちらを装着して聴いてみましょう。
どこから観賞しても美しい……絵になる「Kinera Freya」
お待たせしました、こちらがKinera Freyaイヤホンです。イヤホンとしては、これまで見たこともない美しさです。

イヤホンケーブルとの接続には、0.78mmの2pin端子を採用しています。

滑らかで美しい曲面は、見ていて飽きません……。

ノズルの形状も独特です。

この美しさは工業製品というよりも、芸術品です。模様は手描きされているそうで、他の製品写真を見ても、微妙に模様が異なり、同じものがありません。

このハウジングからどんな音が奏で出されるのか、興味が尽きません。早く聴いてみたい気持ちを抑えつつ、まだまだ見ていきましょう。
Kinera Freyaのハウジングはやや大きめ、しかし、装着性は抜群にいい
イヤホンケーブルを接続して、実際に装着してみます。ケーブルも美しいですね……。

やや大ぶりですが、軽量に仕上がっているので圧迫感はありません。

むしろ、カスタムIEMのような形状をしているため、無理なく耳にフィットします。

ケーブルはしなやかで柔らかく、メガネを欠けた状態でも無理なくかけることができます。

finalのTYPE Eイヤーピースを付けた状態で装着しましたが、ジャストフィットして、耳と一体化しているかのようです。

それでは、いよいよ試聴へ……といきたいところですが、Kinera Freyaにはまだまだ見どころがあるのです。
Android(USB-C)もiPhone(Lightning)も何でも挿せる
付属品の中にLightning アダプターケーブル(写真左)とUSB Type-C アダプターケーブル(写真右)が含まれています。

USB Type-C アダプターケーブルを使えば、イヤホンジャックのないAndroidスマートフォンや、iPad Proと接続することができます。

イヤホンジャックのないiPhoneでも、Lightning アダプターケーブルを使えば余計なものを買わずにKinera Freyaイヤホンを接続することができます。

この2種類のアダプターケーブルは、編み込みされた頑丈な仕様になっています。アダプターで懸念される断線の心配が少なくなっており、こういった配慮もKinera Freyaの完璧さを支えていると言えます。
……それで、Kinera Freyaの音質はどうだろう?
今回Kinera Freyaをレビューする直前まで、KZ社の新作ハイブリッドイヤホンKZ ZAXをレビューしていました(KZ ZAXのレビュー記事)。
KZ ZAXのクリアな音色と、解像感の素晴らしさに感動していただけに、どのくらいの差が出るのか(あるいは出ないのか)、楽しみにしていました。まずは、ハイレゾオーディオに対応したイヤホンジャックを持つAndroidスマートフォン「Mi 10 Lite 5G」です。

Amazon Music HDのダウンロード音源で聞いてみました。Androidスマホにも関わらず、解像感だけでなく、一つ一つ音が活き活きと、弾けるように軽やかに、それでいて音のエッジは美しく、澄み渡った広い音場で音楽を奏でてくれます。
Androidスマホでもここまで鳴らせるのかと、Kinera Freyaのポテンシャルの高さに心が躍ります。

とはいえ、Androidスマホの限界か、やや音圧にかける軽い音だったので、次はLightningアダプターを介してiPhoneで聞いてみました。

低音から高音まですべての音域でバランスの良い音を鳴らす上、どの音域でも破綻のない、しかし、迫力のある音を奏でてくれます。それでいて解像感の高さから、耳を澄ませば、どの音も深く深く知ることができる。これは気持ちいい音だ……。
ここまでくると、Kinera Freyaイヤホンの本気を知りたくなります。次はiBasso AudioのDX160で聴いてみることにします。

DX160で聴いてみると、力強く、重さと空気感を伝えながら、音が重なりあって、一つの音楽を奏でる……素晴らしい、これがKinera Freyaのポテンシャルか……と感動せずにおれません。
ジャズでもポップスでもロックでも、どんな音楽を持ってきても、バランスと艶やかさ、音が持つ魅力を瑞々しく再現してくれます。左右に配置された各3基のバランスド・アーマチュアが、それぞれの担当音域でプロフェッショナルの仕事をこなしてくれる、そんな印象を持ちました。

最後に、これだけいい音を奏でられるのなら、ワイヤレスでもいいパフォーマンスを出してくれるに違いないと、Shanling M6とShanling UP4の組み合わせでワイヤレスオーディオを聴いてみました。

Shanling UP4が内蔵アンプの力を存分に発揮しているようで、コーデックがLDACであることも手伝って、有線接続時と遜色のない音場を形成してくれます。

……とはいえ、Shanling M6単体で鳴らすよりも、高音域のディティールはやや厳しめ、低音域はUP4で底上げしている感があり、ワイヤレスオーディオの限界は感じます。逆に、その限界を明確にしてくれるほどのポテンシャルがKinera Freyaにあるとも言えますが。
まとめ
北欧神話の女神である「Freya」の名を冠した製品ですが、その女神の名の通り、美しくも勇敢で力強いイヤホンでした。その音は一言で「凛々しく美しい」です。

デザインも付属品も音質もいずれ劣らぬ素晴らしいイヤホンではありますが、あえて難点を挙げるとすれば、デザインが特徴的である点でしょうか。人によって好き嫌いは分かれそうな気はします。