Anker PowerPort Atom PD 1 レビュー/解説・新素材GaNとは?USB PD 30W対応のハイパワー!

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新素材GaN採用のUSB-ACアダプター登場!

USB-ACアダプターとしては異例の事前予告を行うほど、入念に準備を重ねてきたAnker。新素材GaN(窒化ガリウム)を採用した新製品の第1弾「Anker PowerPort Atom PD 1」が発売されました。

ところで、頻繁にアナウンスされているGaN(窒化ガリウム)とは何なのか、なにが画期的なのか調べてみたところ、これからの半導体社会の“未来を担う素材”であることが分かってきました。

INDEX

半導体としてのシリコンの限界が近づいている

物質には、電気を通す「導体」と、電気を通さない「不導体(絶縁体)」があります。前者は銀や銅、後者はガラスやプラスチックですね。
半導体はその中間の性質を備えた物質で、その代表格がシリコン(Si=ケイ素)です。
しかし、多くの分野で幅広く使われてきたシリコンも、小型化や電気効率を追求して行くうちに、半導体素子としての成長に限界が見えてきました。さらなる発展のためには、シリコンに変わる素子が必要でした。
半導体についてもっと詳しく知りたい方は、下記のサイトへどうぞ。

半導体は19世紀に発見され、1940年代にはトランジスタが発明されました。それまでは真空管を使っていたラジオが、トランジスタによって大幅に小型化され、携帯できるようになりました。
半導体とは :日立ハイテクノロジーズ

次世代パワー半導体「GaN」と「SiC」

シリコンよりも優れた次世代の半導体素子として選ばれたのは、化合物半導体でした。シリコンのように単一の元素を使うのではなく、複数の元素を組み合わせる方法です。
今回話題になった「GaN(窒化ガリウム)」は、「Ga(ガリウム)」と「N(窒素)」を組み合わせた化合物半導体です。
世界中で研究開発が進められた結果、産業分野で次世代の半導体素子として採用が進んでいるのが、下記2つの半導体素子のようです。

  • GaN(ガリウムナイトライド/窒化ガリウム)
  • SiC(シリコンカーバイド/炭化ケイ素)

それぞれに特徴があり、国内メーカーはSiCを、海外メーカーはGaNを選ぶ傾向にあるそうです。

市場を重視する海外メーカーは耐圧の低いGaNに力を注いでおり、GaNをスマホ用のACアダプタ電源(AC-DCコンバータ)に使うことを狙った半導体メーカーが出てきている。
第2回:GaNの商用化が加速、SiCはやや足踏み (2/4) | 連載02 省エネを創り出すパワー半導体 | Telescope Magazine

化合物半導体はシリコンより何が優れている?

それでは、SiCやGaNなどの化合物半導体は、シリコンに比べてどんな利点があるのでしょうか。これらの化合物半導体は、シリコンよりも電気を通しやすく、電力の損失が大幅に削減されます。これにより、電力効率の向上や小型化が図れます。(電力効率が悪いと、電力が熱に変換されてしまい、デバイスが熱くなってしまいます。)
少し難しい話になってきますが、これらの素子の特性を測る指数として「バリガーの性能指数」というものがあるそうです。この指数でSiCやGaNをシリコンと比較した場合、約1/1000の小型化が図れるそうです。(ただし、これは素子としての限界値なので、実際の製品の話ではないです)。

素材そのものの性能指数(εμeEc3)で比較すると、SiCはシリコンの440倍、GaNは1130倍と桁違いの高性能を誇ります。
次世代パワー半導体 GaN・SiCへの取り組み |サンケン電気

BFOMは物性定数で定まり、パワーデバイス性能の材料固有の限界性能の指標になる。
バリガー(Baliga)の性能指数 | SiCアライアンス

窒化ガリウムの次は「酸化ガリウム」?

なお、窒化ガリウムの次の素材として、「酸化ガリウム」という半導体素材も登場しているそうで、わたしたちの知らないところで、画期的な研究が進んでいるのですね。(エンドユーザー向けの製品として実用化されるかは、また別の話ですが)

現在、電力制御を行うパワー半導体の世界では、シリコンより半導体物質としてのパフォーマンスが高い炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)を活用する開発が進み、成果を出している。しかし、早くもその先を行く画期的な半導体の新技術が開発されている。しかも日本発だ。(1/5)
世界を一変させる日本発、画期的半導体 京都大学初のベンチャー、酸化ガリウムの新技術(1/5) | JBpress(日本ビジネスプレス)

調べれば調べるほど、奥深い半導体の世界でした……(まだまだ入口の、さらに入口の話だと思いますが……)
こうしたGaNやSiCを使った半導体が広まると、私たちの身の回りの製品は信じられないくらいどんどん小型化・高性能化していきそうです。

Anker PowerPort Atom PD 1をレビュー!

というわけで、GaNの話ばかりになってしまいましたが、このGaNを採用したAnker PowerPort Atom PD 1を購入したので、さっそくレビューします。はい、パッケージからして小さいですね!

中身はPowerPort Atom PD 1とマニュアルになっています。

指でつまめる小ささ!

USB PDを採用しているので、USBポートはもちろんUSB Type-C(以下、USB-C)です。

多くの方が残念がっていたのが、このプラグ。折りたたみ式ではありませんでした。折り畳み機構を入れて、少し大きくなるのがいいか、固定にして小ささを優先するか……の綱引きだったんでしょうか(想像です)。

PowerPort Atom PD 1の品番はA2017、出力はUSB PDらしく、5V/3Aの15Wから20V/1.5A、15V/2Aの最大30Wまで出せます。

さまざまな大きさのUSB-ACアダプターと比較

わが家にある、USB PD対応のACアダプターや、Apple純正のアダプター、などなど1ポートのUSB-ACアダプターと比較していきましょう。
PowerPort Atom PD 1の重量は54.4gでした。

まずは、PowerPort Atom PD 1以外のUSB PD対応アダプタと比較してみましょう。
写真左は、cheeroのCHE-324。PowerPort Atom PD 1と同じくらい小さいですが、こちらは最大18W出力です。一方、写真右のAnker PowerPort Speed 1 PD30は、PowerPort Atom PD 1と同じ30W出力ですが、大きさは明らかに違います。

PowerPort Speed 1 PD30の重さは109.4gと2倍近いです。

https://www.makkyon.com/2017/06/10/anker-powerport-speed-1-pd30/
USB PD対応ではあるものの、最大18Wに留まるcheeroのACアダプター CHE-324は、55.1g。PowerPort Atom PD 1とほとんど同じ重量です。

https://www.makkyon.com/2019/01/06/cheero-usb-c-pd-charger-18w/
CHE-324ともう少し比べてみましょう。体積は、PowerPort Atom PD 1よりCHE-324(写真右)の方が大きいようです。

ただ、CHE-324はACプラグが折りたたみ式。PowerPort Atom PD 1も、もしプラグ折りたたみ式にしていたら、これくらいの大きさになっていたのかもしれません。
大きさでいえば、iPadに付属していたApple純正のUSB-ACアダプターにも近いです。

ただし、こちらはプラグアダプタ方式を採用しているため、そのぶん少し重めの61.6gでした。

Apple純正といえば、iPhoneに付属のUSB電源アダプタ(写真左)やMacBookに付属の29W USB-C電源アダプタ(写真右)とも比較してみましょう。特に、29WアダプタはPowerPort Atom PD 1とほぼ同じ性能ではあるものの、その大きさが際立ちます。
29Wアダプタは108.7gと、この中では重量級。PowerPort Atom PD 1の2倍近いです。

一方で、USB電源アダプタは23.0gですが、性能的には供給電力が5Wなので比べるべくもないですね。PowerPort Atom PD 1はこのUSB電源アダプタよりもひと回り大きいくらいなので、相当小さいことが分かります。

あとは、よくあるタイプのUSB-ACアダプタ。写真左は無印良品の製品。めちゃめちゃ小さいですが、3.5Wしか出ません。写真右はLogitecの製品。こちらは5Wです。

サイズ感としてはこれらの製品と変わらないくらいなのに、USB PDで最大30Wを出してしまう、PowerPort Atom PD 1すごいです。これが窒化ガリウムの力……!

PowerPort Atom PD 1の給電性能も(一応)チェック!

Anker製品なので疑う余地もないですが、一応確認しておきましょう。MacBookに接続してみます。ケーブルはちゃんとUSB PDに対応したAnker製のUSB-Cケーブルです。

システムレポートを見ると、ちゃんと30W表記になっています。

同じケーブルで、USB-C採用のiPad Proにも給電してみます。スペック上はUSB PDで最大18Wまでいけるはずなので、この数値で問題なしですね。
USB PDといえば、iPhoneも忘れてはいけません。iPhone XS Maxに繋げてみます。なお、ケーブルはApple純正のUSB-C to Lightningケーブルです。約18W出ているので、USB PDで給電されているようです。

USB-C to Lightningケーブルといえば、この春にいよいよ各社から発売が解禁されます。Ankerも先日プレスリリースを出していました。

Anker初のUSB Type-C(以下USB-C) to ライトニング ケーブルが、2019年3月上旬にいよいよ登場します。
まもなく発売!MFi認証を取得した、Anker初のUSB-C & ライトニング ケーブル | Anker(アンカー)公式オンラインストア

売り切れないうちに、ぜひ手に入れておきたいものです。

次は、USB PDが2ポートあるPowerPort Atom PD 2?

すでにAnkerから公式に発売が公言されていますが、次は、最大60Wの出力を持つPowerPort Atom PD 2が控えています。USB PDに対応したUSB-Cポートが2つあり、用途が広がりそうです。

「Anker PowerPort Atom PD 2」
コンパクトサイズながら、USB PDに対応したUSB-Cポートを2つ備えており、2ポート合わせて最大60Wの出力ができる。
次世代パワー半導体素材「GaN」と未来の充電器 | Anker(アンカー)公式オンラインストア

まとめ

というわけで、記事の半分くらいは窒化ガリウムについての説明でしたが、Anker PowerPort Atom PD 1は期待に違わない超小型のUSB PDアダプタでした。(飛び出たプラグだけはどうしようもないけど、こういう製品を付けて、傷がつかないようにしますかね)
新たな半導体素子GaNを使って、Ankerの製品群が次々と小型・高性能化していくのだと考えると、期待が膨らみますね!

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この記事を書いた人

Webマーケティングを生業にする、どこかの企業のマネージャー。あなたが使っているWebサイトの裏側で出会っているかもしれません。
このサイトは趣味で作っているものなので、仕事内容とは関係がありません。春と秋に山手線一周歩くイベント(ほぼ観光)を主催しているので、気になる方はイベントページを見てみてください。

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