たびたびやってくる半透明=トランスルーセントブーム。特に1990年代はトランスルーセントのガジェットが多かったように思います。携帯電話やポータブルゲーム機、そして1998年の初代iMacを発端とする周辺機器類です。
そして、2021年。今度は完全ワイヤレスイヤホンという、現代技術の粋が詰まった超小型デバイスでトランスルーセントの製品がリリースされました。
Nothing Ear (1) とは?
今回紹介する完全ワイヤレスイヤホン Nothing Ear (1)は、イギリス・ロンドンを拠点とする企業、NOTHING TECHNOLOGY LIMITEDの製品です。2020年10月に設立された、まだ新しい会社のようです。
そのNOTHING社が開発したのが、完全ワイヤレスイヤホン Ear (1) です。ティザーサイト等で、そのデザインが“透明”であることが強調されていましたが、それは人と技術の間にある障壁を取り除く=シームレスな未来を想像するという使命を、象徴的に形作った結果と言えます。
詳しくはこのあと、大量の写真を交えて紹介していきますが、実に美しく、情熱を持って作られた製品だと分かるでしょう。
2021年12月には、ブラックモデルも発売されました。
※今回、レビュー用に製品サンプルをご提供いただきました。
※提供いただいたモデルは、技適の記載がないグローバルモデルだったため、総務省の「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」に開設の届出を行なっています。日本で販売されるモデルは、技適取得されたモデルとのことですので、安心して購入してください。
Nothing Ear (1)をレビュー
こちらがパッケージ。真っ黒な背景にイヤホンのアップだけ。製品名はイヤホンに記載されたものだけ、という潔さ。
側面を見ると、ようやく製品名やモデル名が書かれていますが、ここもドットで構成されたフォントを使用しています。ドットとドットの開きぐあいからして60〜70年代くらいのブラウン管ディスプレイのイメージでしょうか。
背面もシンプルなもの。製品のイラストの下には製品スペックが明記されています。
製品スペックもすべてドットフォントで描かれています。徹底してますね。
さて、パッケージをぐるりと見回しても、開け口は1箇所しかありません。赤いベロがついているので「ここから破って開けなさい」ということですね。
ビリビリと箱に沿って破っていきます。ビリビリビリ。
中からシルバーの箱が出てきました。SFのアイテムのようだ、シンプルすぎる、凝りすぎ。でも嫌いじゃない、むしろ好き。
シルバーの内箱には一切の説明がありません。メーカー名も製品名もありません。
さらに内箱を開けていって、ようやくNothing Ear (1)とご対面です。事前に知っていたとはいえ、それでも驚く透明感。これ自体がブリスターパッケージなんじゃないの?と思えるほどに。
内容物を取り出してみましょう。Ear (1)以外の付属品は、全て黒のボックスに収められています。各ボックスには何が入ってあるか明記されていますが、もちろんドットフォントですよ。
ここまでやるかと驚くのは、付属品の箱を開くと、フルオープンすること。イヤーピース(S/L)とUSBケーブルが入っています。付属品を取り出したら潰さずに捨てられます。
イヤーピースはSとLが付属しています。中間サイズのMは、ear(1)に取り付けられています。
ユーザーマニュアルだって、妥協しません。黒地に白のドットフォントです。
ユーザーマニュアルの内容もすべてドットフォント。ブレない。
ユーザーマニュアルの中にはコンパニオンアプリダウンロード用のQRコードが仕込んであります。ただ、QRコードさえもドットで構成した特別版。このQRコードちゃんと読めるの……?
秒で読めます!(iPhoneのQRコードアプリの画面で認識)
そして、こちらが、Nothing Ear (1)のイヤホンと充電ケース。美しい……。
詳しく見ていきましょう。
Nothing Ear (1)を大量の写真でレビュー
Ear (1)を見ていきましょう。冒頭からトランスルーセント(半透明)と言っていますが、これはもう、透明と言って差し支えないでしょう。
見た目を詳しく見る前に、完全ワイヤレスイヤホンとしての重量を計っておきましょう。66.8gと、完全ワイヤレスイヤホンとしてはちょっと重め。ただし、ケース自体も大きめなので、手にしてみると重く感じません。
さて、クローズアップしていきましょう。まずはケースの中を見てみてください。イヤホンの形状に合わせてケースが整形されています。そう、これはケース内でイヤホンがズレないための工夫です。
ケースもイヤホンもパーツの透明度が高すぎて、充電ケースを越しでもイヤホンの内部構造が見えてしまいます。
ケース背面には、ペアリング用のボタンとUSB-Cポートがあります。Qiワイヤレス充電にも対応しているので、後ほど確認してみます。
ケースの底面を見ると、イヤホンの下にシルバーのパーツが埋め込まれていました。これは、イヤホンを充電ケースに固定するためのマグネットです。
よくある完全ワイヤレスイヤホンなら意識することのないマグネットですが、Nothing Ear (1)ほど透明度が高いと、このマグネットの処理一つとっても疎かにできません。
ケースを開けていきましょう。
イヤホンは、製品名が見えるように配置されています。
イヤホンには、白のマークと赤のマークがあります。赤は右耳のユニット、白は左耳のユニットであることを表しています。
充電ケースのマグネットにもこの色分けがしてあるので、左右を入れ間違う機会は少ないでしょう。
イヤホン自体をレビューする前に、十分に充電しておきましょう。
Nothing Ear (1)の透明なケースでも充電はワイヤレス!
こんなに透明なケースなのに、Qiワイヤレス充電にも対応しています。もちろんケース中央の白いユニットがその機能を担っているわけですが、ケースのほとんどを透明にしているので、目立ちません。
数々の完全ワイヤレスイヤホンを使ってきましたが、透明・半透明なものはほぼありません。こうして充電パッドの上に乗せているNothing Ear (1)を見ると、完全ワイヤレスイヤホンの常識を打ち破られた新鮮な驚きを禁じ得ません。
十分に充電が終わったので、Nothing Ear (1)のイヤホンそのものも見ていきましょう。
ノイズキャンセリングも外音取り込みも対応する透明なイヤホン
充電ケースから取り出したNothing Ear (1)イヤホンがこちら。AirPodsのようなスティック型の完全ワイヤレスイヤホンです。
左右のユニットを合わせた重量はわずか9.5g。なんと10gを切っています。充電ケースはそこそこ重くなっていましたが、逆にイヤホン自体は軽量に仕上がっています。
充電ケースも美しかったですが、内部メカニズムも見えているイヤホンはさらに美しく見えます。なお、この面がタッチセンサーになっていて、タップや長押しでの操作が可能になっています。
ただ、透明なのは、耳の外に出るスティック部分のみ。耳孔に入る部分は白いパーツで滑らかな曲面を描いています。
透明なスティック部分を拡大してみると、回路から各種パーツに至るまで整然と並んでいます。ここまで見られることを意識した設計をしているわけです。
スマートな見た目とは逆に、極限まで突き詰めた執念さえ感じる、すごい製品です。
Nothing Ear (1)は小さくて軽くて装着しやすい
さて、ここまで充電ケースをイヤホンを見てきましたが、いよいよNothing Ear (1)を装着してみます。
先ほど計量して、非常に軽いことが分かりましたが、イヤホンそのものも小さいので、耳の外側に出る部分はわずかです。
装着感は良好で、首を振っても、このまま走っても落ちません。長時間音楽を聴いても負担の少ないつけ心地です。
iPhoneとNothing Ear (1)をペアリングしてみる
さて、iPhoneで使ってみましょう。まずはNothing Ear (1)のコンパニオンアプリをインストールします。記事前半で紹介したQRコードからAppStoreに進みます。
アプリを起動して、イヤホンをペアリングします。
アプリからNothing Ear (1)を探してくれます。このサーチ画面も非常にシンプル。文字は一貫してドットフォントです。
ペアリングが無事終了すると、アプリ上からイヤホンの充電状況やノイズキャンセリング・外音取り込みの操作が可能になります。
こちらが、アプリのトップ画面です。ダークテーマが適用されているので黒い背景ですが、これをオフにすることもできます。また、記事中では英語のインターフェースになっていますが、現在は日本語化されています。
HEAR(聴く)ボタンを押すと、パーソナルサウンドの操作パネルが開きます。ここで、ノイズキャンセリングや外音取り込みを設定できます。イヤホンの長押しで切り替えることも可能です。
イヤホンの操作方法も変えられます。初期状態ではトリプルタップで次の曲、長押しでノイズキャンセリング切り替えになっています。
イヤホンを探す機能にも対応しています。イヤホンがどこにあるか分からない場合は、使ってみてください。なお、イヤホンから大きな音が鳴るため、耳につけたままこの機能を使用しないでください。
Nothing Ear (1)のファームウェアアップデートもこのアプリから行えます。アップデート画面もシンプルでかっこいい……。
製品の作り込みも抜群ですが、アプリの完成度も素晴らしいです。
Nothing Ear (1)の音質は……?
さて、充電ケースからイヤホンからアプリに至るまで、完璧と言っていいほどの完成度。しかし、Nothing Ear (1)は完全ワイヤレスイヤホンです。その音質はどうでしょうか。iPhone 12 Pro Maxとペアリングした状態で、Apple Musicのロスレス音源を聴いてみます。
ここまで作り込む製品の音質が妥協するわけもなく、広い音場と細やかな解像感、クリアな高音から、メリハリの効いた低音に至るまで、素晴らしくバランスの良いチューニングがなされています。まあ、ごちゃごちゃ言っていますが、詰まるところ「すげー綺麗な音が鳴っている」……というわけです。透明感すごい。
スペックを確認してみると、ドライバーに11.6mmのダイナミックドライバー、グラフェンの振動板を使用しているようで、トレンドをしっかり採用してきている印象です。もちろん、チューニングもあってのことでしょうが、ここでも妥協のない作り込みを見ることができました。
Nothing Ear (1)のノイズキャンセリングと外音取り込みは?
最近の完全ワイヤレスイヤホンの必須機能とも言える「アクティブ・ノイズキャンセリング」と「外音取り込み」をNothing Ear (1)も採用しています。
ここまでくれば、もうお分かりかと思いますが、この機能も実に素晴らしくチューニングされています。ノイズキャンセリングは強すぎず自然な効き具合だし、何より外音取り込み時に会話ができるレベルの透明感があります。
高級な完全ワイヤレスイヤホンでも、日常会話ができるレベルの外音取り込みは厳しい場合がありますが、Nothing Ear (1)はAirPods Proレベルでイヤホンをしたままの自然な会話が可能でした。
アップデートが続々!発売後のNothing Ear (1)の動向
9/24(金) 機能アップデート!低遅延モードをサポート!
9月24日にEar (1)アプリがアップデートされ、イヤホンをアップデートすることで低遅延モード(Low Latency Mode)が搭載されました。
音ゲーや、YouTubeやNetflixでの動画の音ズレが気になる人には嬉しいアップデートです。イヤホンをケースに入れたままアップデートできるので、必ず実行しておきましょう。
9/28(火) 出荷10万台突破!イースター・エッグの隠し機能も!
9月28日、Nothing Ear (1)の累計出荷台数が10万台を超えたそうです。これを記念して、Ear (1)アプリの中にイースター・エッグ(隠し機能)が設置されました。下記はNothing Technology Limited CEOのカール氏によるツイートです。
ちなみに、イースター・エッグってなに?という方はWikipediaをどうぞ……。
これらを「イースター・エッグ」と呼ぶのは、キリスト教の復活祭の際に、装飾した卵(イースター・エッグ)をあちこちに隠して子供たちに探させる遊びにちなむ。
イースター・エッグ (コンピュータ) – Wikipedia
イースターエッグは複数あるらしいんですが、ノーヒントで見つけるのは至難の業(というより不可能)。カール氏のツリーにぶら下がっていた、次のツイートを参考にして、私も1つだけイースター・エッグを見つけることができました。
見つけたのは、ケースのLEDライトのカラーをカスタマイズできる「カスタマイズケースライト」です。イースター・エッグといえどしっかり日本語化されています。こうした気遣いだけでも、好感度爆上がりですね。
通常は、バッテリーレベルに応じて、グリーン→オレンジ→レッドと変化するのですが……
このイースター・エッグの機能を使えば、一つ一つのカラーをカスタマイズできるのです。
隠し機能にしておくにはもったいない機能ですが、このほかにもイースター・エッグはまだまだあるのだとか……。Nothing Ear (1)はまだまだ進化しそうです。
12/13(月) ブラックバージョン発売!
↓こちらの記事でレビューを行いました。ホワイトバージョンとの比較も行っています。
後継機種のNothing Ear (2)が登場!
後継機種として、新たにハイレゾワイヤレスコーデックLHDCに対応した、Nothing Ear (2)が発売になりました。
こちらもレビューしています。
Nothing Ear (1)のまとめ
見た目にインパクトのあるデザインですが、細部まで一切の妥協なく作り込まれた素晴らしいクラフトマンシップ、そして見た目を裏切らない透明感のあるサウンド、自然なノイズキャンセリングに、日常会話が可能なレベルの外音取り込みと、全てをシームレスに繋ぐ、すごい製品でした。
NOTHINGという企業が掲げる理念を、余すところなく形にした、すごい完全ワイヤレスイヤホンでした。この見た目に一目惚れした方は、購入しても間違いのない製品だと断言できます。