世の中にBluetoothのワイヤレスイヤホンは数多く存在しますが、有線イヤホンを上回る音質を持つものはそう多くはありません。それはSONYやBOSE、Appleといった有名なメーカーでさえ同様で、代わりに独自コーデックやノイズキャンセリング、AirPodsに代表される左右独立の完全ワイヤレスといった優位性をアピールしています。(将来的には、Android8.0で採用される予定のLDACや、aptX HDなどのハイレゾ向けコーデックが普及することで、少しずつ状況が変わってくるとは思います)
今回紹介するAMPSoundも、他にはないユニークな機能が備わっています。3つの特徴を順に説明していきます。
JabeesのBluetoothイヤホン「AMPSound」をレビュー
イケメンパッケージです……。ボックスは直方体で、ワイヤレスイヤホンとしては大きい方です。かなりしっかりしたボックスなので、値段なりの安心感があります。
マグネット式のパッケージを開くと、AMPSound本体が姿を現します。透明な殻があるわけではないので、そのまま取り出せます。
内容物の一覧。イヤーピース、イヤーフック、MicroUSBケーブル、キャリングケース、マニュアル一式、AMPSound本体、そして小さく細いドライバーが1本付属しています。
イヤーピースとイヤーフックは、AMPSound本体に付属しているもの以外に、各種サイズのものが揃っています(イヤーピース2種×3サイズ、イヤーフック1種×3サイズ)。イヤーピースを取り替えることで、フックなしにもできます。
こちらがAMPSound本体。Bluetoothイヤホンなので、ケーブルは左右のユニットをつなぐ1本だけ。ケーブルの余りを調整するパーツが付いています。
左右の各ユニットは、金属製の凸ばったデザインです。このシンプルなデザインがかえって男心をそそります。
左右のユニットは、マグネットで吸着が可能になっています。
見た目に大きそうな印象を受けますが、SHUREのSE425(左上)、AppleのAirPods(下)、AMPSound(右)と比べても、特別大きいという印象はありません(大きいといえば大きいのですが)。
AMPSound自体の重さも19.3gしかなく、一般的なBluetoothイヤホンと変わりはありません。
右耳側にあるリモコンで、便利だなと思ったのは電源のON/OFFスイッチ(メーカーロゴ右横)です。安いBluetoothイヤホンは、電源ボタンを押し続けることで電源のON/OFFを行いますが、AMPSoundはスイッチ式になっているため、即時電源を入れることができます。そのほかにマルチファンクションボタン(写真右下の「M」の刻印があるボタン)がありますが、この説明はまた後ほど。
ところで、Bluetoothイヤホンをよく使う方ならお気づきかと思いますが、このリモコン部分には充電用のMicroUSBポートがありません。ユニット側にあるのでしょうか?いえ、このイヤホンのユニークな機能の一つは、この充電方式にあります。
さて、デザイン上のアクセントにもなっているのが、左右の各ドライバーに取り付けられたドラム型のカプセル。
これ、実は回すことで取り外しが可能です。カプセルの内側には円周上に金属端子があります。こうすることで取り付け時に、接点の位置を気にしなくてよくなるわけですね。
左右に取り付けられたこのカプセル、マニュアルには「battery capsule(バッテリーカプセル)」と表記があります。しかし、MicroUSBで充電するようなポートはどこにもありません。
特徴1:バッテリーケース
そこで登場するのが、このキャリングケース。一般的なイヤホン用のキャリングケースに比べると四角く、かなり大ぶりです。
重さは159.5gと、スマホ一台分くらいの重量があります。
開けてみると、左側に見慣れない凹みがあります。右側にイヤホンを入れるのですが、ちょっとした上げ底感があります。下には何があるのか。
ここまでお読みいただいた方なら想像がつくと思いますが、ここには……
左右のバッテリーカプセルがはまります。ケース左上の電源ボタンを押すことで給電が始まります。1時間半で満充電が可能です。
キャリングケースを見ると、側面には入力用のMicroUSBポートと、出力用のUSB Type-Aポートがあります。なぜ出力用のポートがあるのかというと……
もちろんモバイルバッテリーとして活用できるのです。これは一石二鳥!!!なお、バッテリーカプセルは各50mAhしかないのに、バッテリーの容量は3,000mAhもあります。イヤホンを充電する傍ら、iPhoneを充電することに何の問題もありません。
iPhone 7 Plusへの出力をチェックしてみたところ、5V/1A以上の給電ができていました。急速充電とまではいかないものの、標準のACアダプタ以上の給電ができていることが分かります。
特徴2:アンプ内蔵による迫力のサウンド
次に音質をチェックしましょう。他のワイヤレスイヤホンと比較してみました。再生環境はMac上のiTunesを使用、Bluetooth ExplorerでaptXをONにした状態で始めます。
AMPSound以外に比較に使用したのは、言わずとしれた完全ワイヤレスイヤホン「AirPods(レビュー記事)」、エントリークラスとの比較用として「OKCSC DD4(レビュー記事)」を使用しました。
結果は下記の通り。※有線イヤホンの時は、「◎・◯・△・×」で評点をつけていましたが、Bluetoothイヤホンは音質の差異が大きいため(同じ「○」でも差が激しくなる)、この採点方法は使っていません。
CQCQ (神様、僕は気づいてしまった) | 月曜日戦争 (吉澤嘉代子) | ようこそジャパリパークへ (どうぶつビスケッツ×PPP) | 美女と野獣 (アリアナ・グランデ、ジョン・レジェンド) | |
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Jabeee AMPSound (aptX) | やや音がこもりがちな傾向があるものの、迫力あるオープニングから、スピードに乗ったメロディーラインが綺麗に聴こえる。低音域の押し出しが頼もしい。 | 音場の広がりを感じることができる。音色の一つ一つが生き生きとしている。ただ、高音域は頭を押さえられているようで、もうひと伸び欲しいところ。 | 低音が強く迫力はあるものの、女声がうまく分離できていないようで、けものの集合感が出ていないのが残念。 | アリアナ・グランデの美しい歌声と、ジョン・レジェンドの力強い歌声のハーモニーに迫力がある。一つ一つの音に強さがある。 |
Apple AirPods (AAC) | クリアな音場を提供するAirPodsらしく、細やかなストリングスからハイトーンなボーカルまで音の重なりを感じることができる。ただ、低音に迫力がないので、物足りなさを感じる。 | 音色が豊かではあるものの、この曲の世界観を形作る、音色の豊かさを表現するには、各音の弱さが際立ち、物足りなさがある。 | 透明感のある女声の重なりがうまく出ており、けものフレンズの世界観をうまく感じ取ることができる。 | アリアナのゆったりとした出だしを綺麗に聴かせてくれる。美しいボーカルが響き渡る。一方で低音がまろやかに聞こえてしまい、もう一歩押し出しが欲しいところ。 |
OKCSC DD4 (SBC) | 冒頭からボーカルの強さが出ている。全体のスピード感と畳み掛ける音場がうまく出ている。この価格帯の製品で言えば、十分に低音は出ているのだが、上記2製品と比較すると弱さは否めない。 | 一音一音にクリアさはあるものの、音の重なりに弱く、解像感に欠けた印象を受ける。全体的に音が弱い。 | ボーカルの解像感はあるものの、高音の伸びが足りないのか、消化不良感がある。 | 全体のバランスはよく、この価格帯のイヤホンとしてはがんばっている印象がある。 |
AMPSoundは、AirPodsと比べると音がややこもりがちですが、Bluetoothイヤホンとしては珍しい力強い低音の押し出しを感じます。これもアンプ内蔵の所以でしょうか。
特徴3:補聴機能
そして、実は本製品の最大の特徴は音楽再生能力ではなく、“補聴”機能にあります。写真右下の「M」ボタン(マルチファンクションボタン)を長押しすることで、音楽再生と補聴機能を切り替えることができます(併用は不可)
この機能をONにすると、少しだけサーというノイズが入り、周辺の話し声・環境音などがよく聞こえるようになります。例えば、電車のホームでこの機能を使うと、背後1〜2mで話している会話もよく聞こえますし、家の2階で使うと、階下の話し声もよく聞こえます。日常の聴力にプラスアルファされ、自分の聴覚が広がる感じです。
一方、補聴機能といっても医療機器としての「補聴器」ではないため、あくまで日常生活における聴力のサポートだと思ってください。
本製品のレビューにあたって、補聴機能が必要となりそうな「難聴」について調べてみたのですが、難聴にもレベルがあり、軽度難聴と呼ばれるものだと「騒がしい中で会話が聞き取りにくい」「離れたところから呼ばれても気づきにくい」といった症状で、自覚しづらく人から指摘されて気づくことが多いようです。
ちなみに付属品一覧で紹介した小さく細いドライバー、これは補聴機能のデフォルトのボリュームを増減させるもの。バッテリーカプセルを取り外してから使います。
まとめ
モバイルバッテリーと補聴機能を持つ、ちょっと異質なBluetoothイヤホン。
使いどころがハマれば、唯一無二の存在として絶大な力を発揮してくれそうです。