有機ELが身近になってきたけど……
世界初の有機ELテレビは、2007年のSONYのXEL-1だったんですよね。11インチで20万円という超高価な製品でしたけど、わずか3mmという薄さ、液晶テレビが太刀打ちできない豊かなコントラストと、まさに次世代ディスプレイの凄みがありました。
ソニーは、世界初※1の有機ELテレビ「XEL-1」を発売します。 「XEL-1」は、11V型で最薄部約3mmという、新しいテレビの形を提案します。さらに、コントラスト比、ピーク輝度、色再現性、動画性能の全てにおいて優れた性能を実現する自社開発有機ELパネル「オーガニックパネル」※2を搭載し、未体験の美しい映像を表現します。
世界初 有機ELテレビ発売
XEL-1の登場から15年が経ち、有機EL(以下、OLED)テレビは(同サイズの液晶よりプレミアな価格ではあるものの)一般的になりましたし、日常的に使用するスマホはOLED採用が珍しくなく、iPhoneもSEを除いて全機種がOLEDです。
しかし、まだまだOLEDが一般的でない市場があります。それは「PC用ディスプレイ」です。OLEDのPC用ディスプレイは、LGがプロ向けに発売している程度だし、ノートPCでもASUSが一部機種に採用している程度です。いずれも液晶ディスプレイに比べると、数倍高価です。
そんな中、モバイルディスプレイ市場でOLEDパネルのモバイルディスプレイを発売したメーカーがあります。それは2014年に創業した中国のディスプレイメーカー「INNOCN(イノセン)」です。AmazonでPC向けディスプレイを販売しているので、INNOCNの文字を見かけた人も多いのではないでしょうか?
INNOCN 15.6インチOLEDディスプレイ 15K1F をレビュー
今回レビューするのは、INNOCNのモバイルディスプレイ製品群の中で、15.6インチサイズでフルHD解像度を持つ「15K1F」です。
※本レビューにあたって、製品サンプルをご提供いただきました。
薄すぎ!OLEDはモバイルディスプレイの新たな潮流になる??
パッケージはシンプルなクラフトパッケージです。開けていきましょう。
こちらがINNOCN 15K1Fの本体です。前面はフラットで、凹凸がありません。オモテもウラもフラットで、シンプルなプレートといったところ。
付属品には、スタンド兼ケース、HDMI to MicroHDMIケーブル、USB-Cケーブル(給電用)、USB-Cケーブル(映像・電源用)、USB-ACアダプターがあります。
USB-Cケーブルは2本付属していますが、実はそれぞれ役割が異なります。コネクタ部分が太く長めなのが映像入出力・給電用。細く短いのが給電用です。
クイックスタートガイド(写真右)とともに工場出荷時のキャリブレーションレポートが同梱されていました。キャリブレーションシートが1枚あるだけで、品質への期待が高まります。
USB-ACアダプターは、やや大きめ。プラグは直付けなので、折りたためません。
付属のUSB-ACアダプターの出力は最大30Wと、モバイルディスプレイとしては出力が高めです。
INNOCN 15K1FのケースはiPadのよう??
次に付属のケースを見てみましょう。よくあるモバイルディスプレイのケースは、ブックカバー状のものが多いですが、15K1Fに付属のケースは、フタとケースが一体化した、まるでiPad用のようです。
下はディスプレイ全体を覆うポリカーボネートのケース、上は折りたたみのできるフタになっています。
INNOCN 15K1Fはフラットでスタイリッシュでモバイルディスプレイ
INNOCN 15K1Fの背面はフラットな金属製。まるで高級ノートPCの天面のようです。
ユーザーから見て右側面にMini HDMI、USB-Cポートが2基、音量ボタンと、インターフェースが集中しています。ステレオスピーカーも備えています。
上面には電源ボタンがあります。OSDを操作する際にはこのボタンが決定キーになります。その横には、給電状況を示すLEDもあります。
左側面には、スピーカーだけ。
画面サイズが15.6インチのため、重量は732gあります。iPad Pro 12.9インチよりちょっと重いくらい。ただ、面積は広いので、iPad Proよりも体感は軽いです。
INNOCN 15K1Fと付属ケースを組み合わせると1197gとなり、1kg超えました。MacBook Airくらいの重さです。
ケースのフタを後ろに回し、折り紙のように曲げるとスタンドになります。
それでは、MacBook Airに接続してINNOCN 15K1Fの画質や使い勝手を見ていきましょう。
自然な美しさが魅力の、INNOCN 15K1Fモバイルディスプレイ
MacBook AirとUSB-Cケーブルで接続してみました。第一印象は「美しい!」でした。これまでのモバイルディスプレイは、色みが独特で調整が必要だったり、鮮やかすぎて目が疲れたりと、据え置きのディスプレイとは違う印象がありました。
しかし、INNOCN 15K1Fの画面は、自然な美しさで、高品質なパネルであることが一目でよく分かります。
この美しさは本物なのでしょうか?液晶パネルの美しさに定評のある、MacBook AirやiPad Proと直接比較してみます。
INNOCN 15K1Fは、MacBook AirやiPad Proよりも綺麗?
MacBook AirとINNOCN 15K1Fの角度を揃えて並べてみました。MacBook Air(写真左)の輝度は最大、INNOCN 15K1F(写真右)の輝度も最大にしています。並べてみると、MacBook Airと遜色のない美しさだとわかってもらえるでしょうか。さらによく見てみると、INNOCN 15K1Fのほうが色の深みが出ていることがわかります。
こうなると、iPad Pro 12.9インチとの比較にも期待がかかります。(iPad Pro 12.9はミニLEDを搭載したLiquid Retina XDRディスプレイです)
iPad Pro 12.9インチ(写真左)とINNOCN 15K1F(写真右)を並べて比較しました。どちらも同じように美しいですが、INNOCN 15K1Fの方が明るさと暗さのコントラストがはっきりしていて、色再現性の高さを示しています。さすがOLEDといったところでしょう。
ちなみに、iPadの画面をミラーリングすると、4:3の画角に固定されてしまうため、15.6インチの大きさが活かせませんね……。
バスパワーでは明るさに制限あり
ところで、MacBook AirとINNOCN 15K1FをUSB-Cケーブル1本だけで接続していると、INNOCN 15K1Fの画面が少し暗いなと感じました。
そこでOSDを表示してみると、明るさが20/100という状態で、これ以上は上がりませんでした。どうやらデバイス側のバスパワーで動かすと、ここが上限になるようです。
そこで、INNOCN 15K1F側にACアダプターを接続してみました。
付属のUSB-ACアダプターを使って電力をアシストすると、100/100まで上げることが出来ました。
USB-Cケーブルだけで運用しようとしている方はご注意ください。
USB-Cポートはどちらに挿しても機能する
INNOCN 15K1FのUSB-Cポートは2つあります。他社のモバイルディスプレイには2基あっても、1ポートは給電専用という製品もありますが、INNOCN 15K1Fは入れ替えて挿しても動作しました。
デバイス側へのパススルー充電も可能
INNOCN 15K1FをACアダプターで給電していると、デバイス側(ここではMacBook Air)へも電源を供給してくれます。
ただ、電力は最低限といったところで、macOSのシステムレポートでは「9W」のアダプターとして認識されていました。
OLEDディスプレイは「黒」が「黒い」?
OLEDディスプレイの特徴としてよく挙げられるのは、高いコントラストと、黒の再現性です。液晶で出す黒って、バックライトで光っているので、本来の黒にならないんですよね。だから、真っ暗なシーンでもちょっともったいない。
しかし、OLEDは暗いシーンでもしっかり暗くなります。そこで、4Kソースの『パシフィック・リム』を再生してみました。
香港でのKAIJUとイェーガーの戦いを再生してみると、香港のネオンはキラキラと輝き、それ以外の闇はしっかり黒くなっています。すごい、さすがOLED。これは映像が楽しくなるやつです。
ステレオスピーカーの音はそれなり……
INNOCN 15K1Fは左右にステレオスピーカーが搭載されています。USB-Cケーブル1本で音声も伝送されるので、便利です。ただ、音質はそれなりで、前述の『パシフィック・リム』の迫力ある音はちょっと鳴りを潜め、軽い音質になっていました。映像の質の高さを考えると、スピーカーはおまけ程度といったところでしょう。
映像が綺麗すぎるので、ちょっともったいない気もしますが、しっかりした音を楽しみたい場合は、ヘッドホンや外部スピーカーを使用しましょう。
INNOCN 15K1Fを、有機EL版のニンテンドースイッチと比べてみる
さて、MacBook AirやiPad Proのディスプレイを上回る美しさのINNOCN 15K1Fですが、ゲームでもその性能を遺憾なく発揮してくれます。
2021年にディスプレイが有機ELにアップグレードした、ニンテンドースイッチと比較してみます。
ニンテンドースイッチ 有機EL版(左写真)と、INNOCN 15K1F(右写真)です……が、スイッチはミラーリング表示ができないので、ちょっと比較しづらくなってしまいました。
そこで、上記の2枚の写真を合成しました(どちらもほぼ同時刻に撮ったもので、調整もほぼ同じ)。INNOCN 15K1Fの方が明るくコントラストも高いです。いつものスイッチの画面よりも、さらに美しく映っています。
ちなみに、INNOCN 15K1Fの画面のリフレッシュレートは60Hzで、120Hzや144Hzといったゲーミングディスプレイの代わりにはなりません。
※ドックなしでのニンテンドースイッチの画面表示には、GENKI Covert Dockを使用しています。
INNOCN 15.6インチOLEDディスプレイ 15K1F のまとめ
OLEDのモバイルディスプレイ、最高!って感じました。スピーカーが並の性能であること以外に、不満は無し。モバイルディスプレイでOLEDってどうなんだろう?と疑問でしたが、MacやiPadと並べても見劣りするどころか、それを上回るほどの美しさで、満足度が高いです。
映画や動画を見るのにも、高コントラストで黒の締まりも良く、映像ソースの良さを存分に引き出してくれています。
冒頭で、OLEDが一般的になってきた、って書きましたけど、本製品はAmazonで4万円を切ります。クーポンも配布されていたりして、さらに安くなることもあるので、ぜひチェックしてみてください。
13.3インチサイズもあります。