先日、AnkerのLightningイヤホン(SoundBuds Digital IE10)をレビューした際に、LAMの搭載・非搭載について、とあるコメントをいただきました。LAMとは、どうもLightningイヤホンの生命線とも言えるパーツのようなんですが……
Lightningイヤホンの新基準“LAM”とは?
LAMとは正式名称“Lightning Audio Module”のこと。Apple製のパーツです。
Lightningイヤホンには、このLAMが搭載された製品と、非搭載の製品、の2種類があります。
LAM非搭載の製品は、Lightning端子→DAC→オーディオ出力、という順番の処理ですが、LAM搭載だとここにLightning端子→LAM→DAC→オーディオ出力となります。
LAM搭載のメリットとデメリットはなんでしょうか……。
LAM搭載のメリット
搭載している製品とそうでない製品の最大の違いは「ロスレス」。iOS機器側から出力されたデジタルなオーディオデータをLAMが受け取り、DACに渡すことでロスレスオーディオを実現しているようです。(ただし、LAM上で何が行われているかは不明)。DSDやflacをはじめとしたハイレゾ音源を聴く際には大いに役立ちます。
そしてもう一点、これがLAMの最大のメリットとも言えるかもしれません。「アップグレードが可能である」という点です。Apple製のLAMを内蔵しているということは、例えばAppleがiOSで24bit/96KHzに対応したり、Appleの手によってハイレゾ対応の新コーデックを開発した際にも、“イヤホン側もアップグレードできる”仕組みになっています。(とはいえ、現時点では将来の可能性の話です)
LAM搭載のデメリット
LAMには分かりやすいデメリットがあります。それは「価格」。LightningコネクタとLAMに、Apple純正品を採用することが前提になるため、非搭載製品に比べると価格が上昇しがち。Lightningコネクタが登場したての頃、Lightningケーブルの価格が高止まりしていたことを思い出します(今でも安いとは言い難いですが)。
USB Type-Cにも存在するロスレス出力
iOSにLAMがあるように、Androidにも同様の技術があります。AndroidというよりUSB Type-Cに起因するものですが、CDLA(Conitnoul Data Lossless Audio)という技術ですので、気になる方は調べてみると良いかと。
LAM搭載のLightningイヤホン“NB-L1”のレビュー
というわけで、LAMを搭載したLightningイヤホンとして、NewBee NB-L1をレビューします!
※本レビューにあたり、センスアビリティ株式会社様より商品サンプルをご提供いただきました。
Apple製品を意識したような、黒くてシックなパッケージ。厚みもそれなりにあります。何が入っているのでしょうか……。
上蓋を開けると、スポンジに埋まったNB-L1が登場。見た目には高級感あるんですが、やや取り出しづらいという難点も。
NB-L1本体と、箱に入ったイヤーピース、マニュアルにケースという標準的な内容物なんですが……
ケースを開けてみてびっくり、カラビナに、スマホの裏面に取り付けるバンカーリング的なやつ、さらに予備のイヤーチップや低反発のイヤーピースまで出てくるという大盤振る舞いな内容物になっているではないですか。使い切れないわ。
ドライバーユニットは、金属製で高級感があります。
ドライバーは見て分かるほどに大口径のもの。ここからどんなダイナミックな音が飛び出すのか、期待が膨らみます。
リモコンは、よくある3ボタンタイプ。左右のボタンは音量のアップダウンのみ。中央のボタンで、再生/停止、Siriの呼び出し、次へ/戻るに対応します。
箱に入ったイヤーピースは、シリコン製のイヤーピース×3セットに加えて、低反発フォームのイヤーピース×3セットも付属しています。これにさらに予備のイヤーピースも付いているわけで、耳の穴がすり減るほど使うことができる、至れり尽くせりです。
※販売元に確認したところ、基本はイヤホン、収納ポーチ、イヤーピースセット(黒x6セット)のみとなり、その他の付属品のセットは現在の在庫限りで終了するそうです。
他のイヤホンと聴き比べてみた
今回比較したのは、本製品NB-L1と、LightningイヤホンのAnker SoundBuds Digital IE10と、Apple純正アダプタを介したSHUREのSE425。
NB-L1のエイジング方法として、メーカー側より推奨された方法を実践した。(高音が出ている軽めの音楽、J-POPなどを20時間-40時間程度)。またイヤーピースは標準のものを使用した。
音源に用いるのは、前回同様、mora.jpやe-onkyoで購入したハイレゾ音源。DSDを1種類とflacを2種類、iTunesで買ったAACを2種類、合計5種類。ハイレゾ音源はiPhoneアプリのONKYO HF Player、AAC音源はミュージックアプリで再生した。音の評価は、◎(超いい!)、○(いい!)、△(微妙)、×(最悪)の4段階にした。あくまで個人の主観ということで。
(NB-L1以外の感想はSoundBuds Digital IE10のレビューと同様のものだが、条件を同じにするため、念のため同じようにすべて聴き直してみた。)
チュニジアの夜 (HANK JONES) DSD 2.8MHz/1bit HF Player | スター・ウォーズ (John Williams) flac 192kHz/24bit HF Player | リライト (ASIAN KUNG-FU GENERATION) flac 96.0kHz/24bit HF Player | Another Day of Sun (La La Land Cast) AAC 44.1kHz/16bit ミュージック | TOKYO GIRL (Perfume) AAC 44.1kHz/16bit ミュージック | |
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NewBee NB-L1 | ○ 音場が澄み切っていて、空間が広がる。楽器一つ一つの音が明瞭に聞き取れ、空間が震える感じがよく伝わってくる。欲をいえば、もう少し迫力が欲しい。 | ○ 全体的な迫力には欠けるものの、クリアな音と、楽器一つ一つの重なりが心地よく聴こえる。 | ○ 他のイヤホンと比較して、ボーカルと楽器の距離感が出ていて、空間を感じることができる。ボーカルも綺麗に聴こえる。 | ◎ 映画の1シーンが蘇るような空間の広がりに、畳みかけるボーカルが凛として響く。美しい音楽だ。 | ◎ 今回の聴き比べで最も際立ったのがこの楽曲。キレのいい高音が耳に心地よい。とてもAACとは思えない、奥行きと空間の広がりを感じるダイナミックな音になっている。 |
SoundBuds Digital IE10 | ○ 解像感よし。空気を震わす音がよく出ている。低音に少し迫力が足りないか。音の抜けがいい爽やかな音、空間が見えるよう。観客席の真ん中で聞いているみたい。 | ○ 高音と低音に伸びが足りないものの、空間の広がりを感じられる。全ての音がバランスよくなっていて、近くの楽器、遠くで鳴っている楽器まで分かる。 | ○ スーパーバスモードに切り替えて試聴。低音を強調したモードだが、そもそも低音が弱いイヤホンなので、これでちょうどいい。ボーカルは明瞭。 | ○ 全体の音の輪郭を感じることができ、ボーカルにも力が出ている。解像感と迫力がうまくバランスされている。 | △ ボーカルが強めに出ている。高音域の押し出しが強い分、低音が弱くなる印象、他のイヤホンと比べてしまうと迫力不足が否めない。 |
SHURE SE425 + Apple純正アダプタ | ◎ 全ての音がバランスよく、全てがハイレベルにまとまっている。サックスの音の震えから、ピアノの鍵盤を揺らす音、ドラムの爆ぜる音、バンドが自分のためだけに演奏しているよう。 | ◎ 最新の音響技術を駆使した映画館の中で聴いているように錯覚する。豊かな音場が展開され、いつまでも聞いていたくなる。 | ○ 目の前で歌っているような迫力と、解像感のある音。ボーカルもベースもドラムも際立つ音は、これがアジカンの音だと感じる。 | ◎ ピアノの音に深みと艶やかさが加わり、一音一音が整列しているように美しいハーモニーを聞かせてくれる。まるで映画の中に入り込んだような没入感をもたらしてくれる。 | ◎ ライブホールで聴いているような迫力と、くっきりとした音の輪郭がわかる解像感。全てがハイレベルな音で、AACでもこの音が出せるという、新鮮な驚きが味わえる。 |
※なお、NB-L1に内蔵されているDACは192kHz/24bitに対応しているそうですが、iOS10の制限で48kHz/24bitでの出力となっているそうです。
まとめ
LAMに注目してレビューしてみたのだけど、NB-L1の音の素直さに驚き。LAMを通じて処理されたクリアな音源と、ダイナミックな音を出してくれるドライバーによって、ハイレゾ音源はもとよりAppleMusicの音源でさえ、全く違ったもののように聴こえる。
三ツ矢サイダーのキャッチコピーに「磨かれた水」という表現があるけれど、LAMを通して、音楽が磨かれて出てきたよう。音の“キレ”をこれでもかと感じる。ハイレゾ音源じゃなくても、AACでもその効果を実感する。これはいい。
(NB-L1の音を聴いた後だと、BOSEやSHUREの音作りが何を目指しているのかよく分かる。それくらい素直な音を聴かせてくれるイヤホンだと思いました。)
もちろんLAMだけでなく、DACやドライバーの作りにも左右されるので、すべてのLAM搭載Lightningイヤホンがこうだとは言えない。ただ、基本性能が担保されていることの安心感はあります。
聞いたことのないメーカーなので躊躇してしまうかもしれないけど、持っている音源をすべて聴き直したくなるほどに、“磨かれた音”を出してくれるイヤホンです。