Apple Vision Proの体験に行ってきた
ついに日本でも販売が開始されたVision Pro。ひと足先に個人輸入していた方々のレビューを読みながら、期待感を高めていたのだけど、日本での販売開始とともに、購入前の製品体験が可能になったので、そそくさと予約をして体験してみた。

ちなみに、私自身はMeta Questを初代から3まで使っているので、それなりにVR体験には慣れている。その視点でレビューしているので、参考まで。
Vision Proはすでに完成形に達している
Appleのデバイスとしては新たなカテゴリになるVision Pro。日本での販売価格は約60万円と非常に高価ではあるものの、その価格に見合うだけの完成度だと感じた。Meta Questシリーズと似たようなゴーグルでありながら、全く異なる設計思想を持って作られているので、同じ価値体験の線上にはない。

Vision Proを使ってみて感じたのは、基本的なUIや操作方法はすでに完成していた、ということ。iPhoneやiPadやApple Watchが初代機から操作方法が変わっていないのと同様に、Vision Proはこの状態で今後も進むのだろう。そして、Apple純正のアプリケーションも完成しているので、あとはアプリケーション待ち、それくらいの完成度だった。
Vision Proは全ての動作がシームレス
Vision ProがMeta Questと決定的に違うのは、コントローラーを必要としない操作系で、座って使うことを前提にしている、ということ。Meta QuestはVRゲーム機だけれど、Vision Proはデスクトップコンピュータだった。しかも、Vision Proは腕を上げるようなこともなく、手元の操作を認識していた。これが非常に精緻で、思った通りに動く感じがとても心地よかった。空間に浮かぶウインドウを広げるのも、まるでMacやiPadのよう。
さらに、Appleらしい操作系だと思ったのが、AR(周囲が見える状態)とVR(没入した状態)の切り替え。周囲をARとVRで切り替えるのもグラデーションをつけるようにスムーズに移行する。精細なカメラと精緻なディスプレイと高性能なCPUのなせる技、といった感じだ。
普及のポイントは「空間ビデオ」
AppleでのVision Pro体験は、隣にスタッフの肩が付いて逐次説明してくれる丁寧なもので、さまざまなコンテンツを見せてもらえた。Vision Pro用に作られた動画はどれもエキサイティングなものだったけれど、最も驚いたし、最も将来性を感じたのが「空間ビデオ」だった。
プライベートなシーンを想定して作られたのは「誕生日ケーキを吹き消すデモ」。Apple Vision Pro内蔵のカメラで撮ったものだと言う、その映像はまるでその場にいるかのような臨場感でm思い出として最高のもの。iPhone 15 Proで撮った空間ビデオも見せてもらった。Vision Proほどではないけど、十分に奥行きを感じ、その場の雰囲気を感じさせてくれる。
将来、病に伏せっても、老後でも、いなくなった家族を思い出す時も、このビデオがあれば、思い出せる。これから動画を撮る時は空間ビデオをオンにすべきだと思ったし、これから子育てをする方もストレージのあるかぎり空間ビデオで思い出を残しておくべきだと思った。
Vision Proの問題は「コスト」「カスタマイズ」「バッテリー」
……とまあ、Vision Proの体験はこちらの想定を遥かに上回るもので、100本のレビュー記事を読むより1分実体験する方が明らかに解像度が上がった。視力に合うレンズも測定してもらったし、自分に合うバンドも選んでもらったし、あとは決済するだけ、という状態にはあるのだけど、さすがに60万円は高すぎる。

最大の要因は「カスタマイズし過ぎていること」だ。素晴らしいデバイスなので、周りに普及したい。しかし、メガネユーザーは専用のレンズを使わなければならないし、ライトシーリングは21種類もあるし、固定するバンドはSMLの3種類ある。自分にあったものでなければ最良の体験にならない。さらに外付けのバッテリーは大きい割に稼働時間が少ない。
ソフトウェアの完成度は高いものの、ハードウェアはまだ進化の途上だ。おそらく世代が変わるごとに劇的にアップデートされていくはず。この先数年も使えるデバイスなら、60万円という金額にも納得感は出てくるものの、数年で陳腐化してしまう可能性も捨てきれなく、今回は見送った。
結論:とりあえず最高峰のゴーグルを体験してみるべき
Vision Proは現時点で最高峰のプロダクトであることは疑いようがない。ただ、まだ価格が高すぎるし、成長の余地もまだまだ残っている。現時点で手を出しても、使いこなせる人は一握りだし、Apple以外のアプリが全然揃っていないし、各社サービスも対応していないところが圧倒的だ。

しかし「未来の体験は早めにしておくべき」だし、「これから撮る動画は空間ビデオで残しておくべき」だと強く思う。とりあえず、Apple Vision (無印)か、Apple Vision Air待ちということで。