デジタル化は進んできたけど、まだまだ残っている「紙」
最近は本を買うにも電子書籍だし、CDやDVDは有料配信やYouTubeで事足りてしまうようになりました。物理的なメディアが消え、すべてがデジタルデータとして存在するようになっています。
写真やアルバムも、フジフイルムのデータ化サービスで少しずつ片付きつつあります(高いけど)。

しかし、古い雑誌や書籍は電子化されないものが多く、何回かの引越しを経て、いまだクローゼットの隅を占拠しています。これらを電子化して気軽に読めるようにしたいのですが……。
雑誌や書籍をデジタルデータにするための手段としては、大まかに下記の2つあります。
- 裁断機でバラバラにしてScanSnapなどでスキャン
- BOOK SCANなどの代行サービスに依頼する
1は機材が必要で手間がかかる。2は冊数ごとにお金がかかる。そして、この2つの方法に共通しているのは「元には戻らない」ということ。ここまで残している雑誌や書籍、できれば裁断したり破棄したりしたくないのですよね。
クラウドファンディングに登場した、本を“裁断しない”スキャナー
クラウドファンディングサイトMakuakeに登場したのが、本を裁断せずにスキャンしてくれるデスクライト兼用のポータブルスキャナー「CZUR Shine」です。
同コンセプトの製品として、ScanSnap SV600やSnapLiteといった製品が登場していますが、前者は2015年の製品で高価で巨大、後者はすでに販売終了となっています。
今回紹介するCZUR Shineは「ポータブルスキャナー」と銘打っています。どんな仕組みなのか見ていきましょう。

※今回レビューにあたって、製品サンプルを提供いただきました。
CZUR Shineをレビュー
CZUR Shineは、黒く巨大なパッケージに入っています。箱はそこそこ場所を取ります……。

パッケージを開けていくと、中からマニュアルと、綺麗に梱包されたCZUR Shine本体が出てきました。

CZUR Shine本体を取り出すと、その下からは付属品の入った小箱。ブロックのように組み合わされていました。

内容物としては、マニュアル、CZUR Shine本体、ソフトパッド(黒)、フットペダル、USBケーブル、指サック2個となっています。

さて、こちらがCZUR Shine本体です。ベースに設置された2本の黒いバー(メインバー・クロスバー)が印象的です。

ポータブルスキャナーではあるものの、全長はそれなりにあります。隣に置いたiPhone 11 Pro Maxから、その大きさが分かっていただけるでしょうか。ただ、その見た目に反して、重量はわずかに約1kg。大きく長いぶん、軽く感じます。

CZUR Shineのベースは、ホームボタン、パワーランプのみというシンプルなインターフェースになっています。

CZUR Shineのベースには、USBコネクタが2つあります。1つはMac/PCと繋ぐためのポート(右側)、もう1つはフットペダルのためのUSBポート(左側)です。

この2つのポートに接続したケーブルは、背面の孔を通して外に出します。

底面にはシリアルナンバーも書かれています。専用ソフトウェアを起動するために必要なので、あらかじめスマホで写真撮っておくと便利です。

特徴的な付属品を見ていきましょう。こちらはフットペダルです。これを踏むことでスキャンを実行してくれます。本を両手で押さえなければならないシチュエーションでも、これを足で踏むことでスキャンできます。これがめちゃくちゃ便利なんです。

そして、一見しただけでその用途がよく分からないのが、この指サック2個です。この使い方については後ほど。

ユーザーマニュアルのほかに、CD-Rに焼かれた専用ソフトウェアが付属しています。

CD/DVDドライブが無いという方もいらっしゃるでしょうが、公式サイトからもダウンロードできるのでご安心ください。今回のレビューでも使用していません。
CZUR Shineをセットアップする
それでは、CZUR Shine本体をセットアップしていきましょう。といっても、Mac/PCとUSBケーブルで繋ぎ、クロスバーを持ち上げるだけ。

スキャン対象物を置くためのソフトパッドは浅めの凹状になっていて、ちょうどCZUR Shine本体を合わせることができるようになっています。

この通り、ぴったりハマります。

メインバーは伸縮できるようになっていて、位置を高く上げることで照射範囲を広くすることができます。

A4見開き(A3サイズ)までスキャンできるので、様々な判型に対応できそうです。

ただ、このソフトパッドの広さとノートPCを置くスペースまで考えると、デスク上にそこそこスペースが必要ですね。
デスクライトとして機能するCZUR Shine
CZUR Shineを起動すると、まばゆいばかりのLEDが点灯します。

下から見てみると、LEDは2灯あり、LEDの間にカメラが見えます。

LEDのON/OFFは、ベースのホームボタンを押すことで操作できます。また、このホームボタンがツマミになっているので、光量の調整もできます。

広範囲を明るく照らしてくれるので、デスクライトとしても十分に使えます。
USBケーブルは、USB-A仕様
なお、USBケーブルはUSB-Aコネクタです。MacBookシリーズのようなUSB-Cオンリーのインターフェースの場合、変換コネクタが必要になります。

USB-Cを搭載する機器は着実に増えているので、今後はぜひUSB-Cケーブル(または変換コネクタ)を付属して欲しいですね。
CZUR Shineの動作には専用ソフトウェアが必要
さて、CZUR Shineでスキャニングするためには専用ソフトウェアが必要です。CD-Rは付属していましたが、最新バージョンは公式サイトから配布されています。

The portable scanner software and manual for our new Shine Ultra Scanner can be downloaded here. This is the best document scanner for Mac and Windows.
Shine Ultra Portable Scanner Software Download for Mac and Windows | CZUR
今回はMac版を使用します。インストーラーは、アプリケーションフォルダにドラッグするだけの簡単仕様です。

CZUR Shineのシリアルナンバーを入力すると起動します。

前置きが長かったですが、いよいよスキャニングしていきましょう。
CZUR Shineで古い雑誌や書籍をスキャンしてみる
今回スキャンするのは、日経トレンディのバックナンバーや、「アップルコンフィデンシャル」といった電子化されていない雑誌・書籍類です。

まずは、日経トレンディから取り込んでみましょう。2008年末に刊行されたもので、ヒット商品ベスト30の中にはiPhone 3GSが並んでいます。

CZUR Shineアプリケーションを開くと、正面にプレビュー画面、左側に編集・加工メニューが並びます。右下の「スキャン」を押すと取り込みが始まります。

黒のソフトパッド上に置かれた雑誌は、輪郭が正確に認識されて取り込まれます。

ただ、日経トレンディのような光沢のある表紙だと、LEDの直下で光が映り込んでしまうようです。
こういった場合、完全に消すことは難しいですが、LEDの光量を調整して少し弱めましょう。
見開きでも自動で補正してしまう優れたソフトウェア
さて、表紙のスキャンはできましたが、ここまでは(画質はともかく)スマホのアプリでもできる取り込みです。しかし、ここからの作業はCZUR Shineの本領発揮です。
雑誌にしても書籍にしても、見開きの取り込みは、左右のページを指で押さえる必要があります。しかし、そうなると指が映り込んでしまいます。
そこで活躍するのがこの指サックです。これを指に通して、雑誌を押さえます。

文字を隠さない程度にページを押さえてスキャンすることで、この指サックが写り込んだ箇所を自動で消去してくれます。専用の付属品だけあって、気が利いた機能です。

ただ、両手でしっかり押さえていると、スキャンボタンが押せません。
ここで役に立つのがUSB接続のフットペダルです。両手で位置決めをして、右足でフットペダルを押せば、スキャンが始まるのです。このフットペダルを併用した作業が思いのほか楽しく、テンポよく次々に取り込みを行うことができます。
そして、厚みのある書籍・雑誌を取り込む際に気になるのが、紙の厚みによる歪みです。ただ、これもCZUR Shineソフトウェアなら、この歪みを考慮した補正を行ってくれます。

ソフトウェアでの補正をさらに修正する場合も、手動でポイントを移動させることで、さらに正確な位置合わせを行うことができます。
取り込み一つとっても、ここまで至れり尽くせりの機能が揃っているのは頼もしい限りです。(気になるところはUSBケーブルとLEDの映り込みくらいですかね……)
まとめ
雑誌や書籍を裁断せず、非破壊でスキャンできるCZUR Shine、ソフトウェアまで含めて素晴らしい完成度です。さらにシンプルなデザインに加え、折りたたんで収納できるコンパクトさ、デスクライトとして使える汎用性、見どころの多いポータブルスキャナーでした。

※MakuakeでのCZUR Shineのプロジェクトは終了して、現在は「CZUR Shine Ultra」として一般販売されています