2018年6月、TwitterにとあるYouTubeのサムネが流れてきた。『秒針を噛む』のMVだった。歌っているのは「ずっと真夜中でいいのに。」
ずっと真夜中でいいのに。その名前はとても叙情的で、後ろ髪をひかれる気持ちになるような、放っておけない余韻を残す言葉。
『秒針を噛む』は、ボーカル“ACAね”さんの凜としたまっすぐな力強い歌声で、断片的に散りばめられた言葉の中に「僕」と「君」の分かり合えない気持ちを歌い上げる。
夜はやがて明けてしまうことを分かっているのに、願いのように綴られた「ずっと真夜中でいいのに」という言葉が、心の中をざわつかせる。
どんなアーティストなんだろうか、YouTubeでのMVと、SNSでの発信でしか分からない。ボーカルのACAねさんは、顔出ししていないので、どれだけ検索しても、どんなユニットなのかも推し量れない。そして、続々と発表されるMV。
『脳裏上のクラッカー』
『ヒューマノイド』
先行して発表された3曲を含む、ミニアルバム「正しい偽りからの起床」のリリース。
ライブに行ってみたい!と思った。(そして、運よくチケットが当選した。)
2019年1月11日、その日がやってきた。
ビルが工事中の渋谷クラブクアトロ前には、たくさんの真夜ラー(ずとまよのファン)が溢れていた。
ファーストライブの名前は「ずっと真夜中でいいのに。 1st LIVE 〜まだ偽りでありんす。〜」
開演30分前の18:30に入場、ステージ上には天井まで伸びるパイプや、キッチン用品で構成されたオブジェなど、ずとまよの世界が広がっている。
その中でも象徴的だったのが、ステージ向かって左上に配置されていた西暦表示のできるデジタルクロック。そこには「2049年10月6日 23:30」の時が動いていた。
2049年10月6日から7日にかけての真夜中。
ステージ横のスクリーンにはMVとともに、「お手元のメガネをかけてください」の表示。ずとまよの登場を待つ真夜ラーは、この、前が見えないメガネをかける。そう、前が見えない。
そして始まる『秒針を噛む』。目の前のステージにACAねさんがいて歌っている。でも、僕たちはメガネで前が見えない。
そろそろ?もうそろそろ?
そう思った矢先、「メガネ外していいよ」。あの、ACAねさんの美しい声で。会場中の全真夜ラーが死んだ瞬間。ACAねさん曰く、ステージ上からはカオスだった、と(ですよね)。
ミニアルバムの6曲しか知らないけど、どう進行するんだろう?新曲が続々と。おいおい、このライブの余韻はすべて記憶に頼るしかないな、いいぞ、もっとやってくれ!
ACAねさんは、かわいいハゼの話をしてみたり、ステージ上から空調の調整を指示してくれたり、かわいいー!って連呼されてたのぶった切ったり。「雲丹と栗」で、フライパンカンカンしてみたり。真っ暗なステージで、懐中電灯を照らしてみたり。ライブってこんなんだっけ?なんだか自由だぞ。
トークは緊張している様子も垣間見えるけど、それも含めて会場中が楽しんでいる。
ロックバンドだっけ?って勢いで、曰く「ヤバい曲」を次々披露していく。そうなんだ、ずとまよは始まったばかり。これから、まだまだ新しい世界を見せてくれる。
『脳裏上のクラッカー』で会場の熱狂は最高潮へ。
え?ACAねさん、ステージ上でハンガーかけちゃうの?なにそれ、かわいいんですけど!
アンコールは『秒針を噛む』から『ヒューマノイド』。あー間違えたー!と声を上げるACAねさん、それもいい。ACAねさんは終始バックライトに当てられて、よく表情が見えなかったけど、そう、楽しそう。
ステージ上のデジタル時計は、1時30分を回ろうとしていた。もう、すっかり真夜中。
2049年10月7日の、真夜中のライブ。
このまま、
ずっと、
真夜中でいいのに。
追記:当日のセットリストは下記になっていたようです。(ミニアルバム以外の曲名はあやふや)
- 秒針を噛む
- ヒューマノイド
- 新曲?
- ハゼ、はせる、果てるまで
- 新曲?
- 新曲?
- あの娘、シークレット
- サターン
- Dear, Mr.F
- 雲丹と栗
- 新曲?
- 君がいて水になる
- 黒く塗りつぶす僕らを
- 新曲?
- 新曲?
- 脳裏上のクラッカー
- アンコール:秒針を噛む
- アンコール:ヒューマノイド