意外と少ないJIS配列のメカニカルキーボード
「JIS配列のメカニカルキーボードが欲しい!」日本語配列のキーボード好きなら、一度は考える願望。……というのも、海外メーカーの製品はUS配列が主流、ローカライズ版であるJIS配列のキーボードは数が限られています。(あと、JISに似たISO配列は罠)
ましてや、静音性と安定性を高めるためのガスケットマウント採用品となるとさらに少なく、加えて、ビジネスシーンで使えるコンパクトでテンキーも搭載するモデルとなると、選択肢は限りなくゼロに近づきます。
そんな状況に風穴を開ける製品が、2026年2月26日にロジクールから発売される「Alto Keys K98M」です。

ロジクール製品として初めてガスケットマウント構造を採用、独自開発の「UniCushion ガスケット」と「Marble Switch」により、至高の打鍵感を実現したメカニカルキーボードです。

発売当初の価格は18,590円(ロジクール公式)。メカニカルキーボードとしては標準的な価格帯、JIS配列&テンキー搭載&Logi Options+によるカスタマイズ性、きわめつけに家電量販店で試用できる入手性を考えれば、この価格設定は決して高くないと感じます。
Alto Keys K98M、開封
というわけで「Alto Keys K98M」を2週間使用することになりました。ロジクール製品として初めてガスケットマウント構造を採用した本製品、カスタムキーボード市場で人気の構造をビジネスユース向けに最適化した意欲作……と感じましたが、実際のところはどうでしょうか。

パッケージを開けると、本体、Logi Bolt USBレシーバー、USB-C充電ケーブル、クイックスタートガイドが同梱されています。カラーはグラファイト(K98MGR)とオフホワイト(K98MOW)の2色展開、今回レビューするのはグラファイトモデルです。

本体重量はデスク上での安定性が期待できる、1,100gとしっかりした重さがあります(持ち運びには現実的ではありませんが)。サイズは幅401mm × 奥行147mm × 高さ39.6mmで、テンキー搭載モデルとしてはかなりコンパクト。一般的なフルサイズキーボードと比較すると横幅が抑えられており、省スペース設計になっています。
最大の特徴、ロジクール独自開発「UniCushion ガスケット」
Alto Keys K98Mの最大の特徴は、ロジクール独自開発の「UniCushion ガスケット」です。そもそも、ガスケットマウント構造とは、キーボードのプレートとケースの間に柔らかい素材を挟むことで、タイピング時の衝撃を吸収し、独特の打鍵感と音を生み出す構造を指します。

キーボード内部の構造なので、外側からは分かりませんが、Alto Keys K98Mの説明を見ると、以下の層が積み重なって構成されています。たくさんのパーツが組み合わさっていますね。
- トップケース
- PBTダブルショットキーキャップ
- Logi Marble スイッチ
- PC(ポリカーボネート)製スイッチプレート
- ラテックス製トップフォーム
- IXPEスイッチフォームパッド
- PCB(プリント回路基板)
- ラテックス製ボトムフォーム
- UniCushion ガスケット
- PCR(再生利用プラスチック)製ボトムケース
他社のガスケットマウントキーボードでもシリコン層は採用されていますが、UniCushion ガスケットは厚さが均一で、PCBを支える部分の設計が工夫されている点が特徴です。
実際の打鍵感……「コトコト」という心地よさ
使用してみて、まず感じたのは打鍵時の「柔らかさ」です。一般的なメンブレンやパンタグラフ式のキーボードとは異なり、キーを押し込んだ際の底打ち感が非常にマイルド。「カチカチ」ではなく「コトコト」という表現がぴったりの、丸みを帯びた打鍵音が心地良いです。
そしてロジクール独自の「Marble Switch」は、その名の通り大理石のように滑らかなキーの動きを実現しています。ストロークは適度で、長時間のタイピングでも指が疲れにくい。特にライティング作業や長文のコーディングをする際、この打鍵感の良さは作業効率に直結します。
ちなみに……誤解されないように言っておくと、Alto Keys K98Mは、静音ではありません。Alto Keys K98Mはメカニカルらしい「音」を残しつつ、不快な高音や鋭い音を抑えた製品です。
自宅やオフィスなど、ある程度の音が許容される環境であれば、K98Mの打鍵音はむしろ「心地よいフィードバック」として機能します。タイピングしている実感を音で得られるのは、メカニカルキーボードならではの魅力です。
“Mac・JIS配列・メカニカル”という貴重な選択
メカニカルキーボードを探している方なら理解いただけると思いますが、JIS配列のメカニカルキーボードは驚くほど選択肢が少ないです。特にガスケットマウント構造を採用したモデルとなると、ほぼ海外メーカーの製品に限られ、US配列が主流です。

その点、Alto Keys K98MはJIS配列(102キー)を採用し、日本語入力を頻繁に行うユーザーにとって大きなメリットがあります。EnterキーやBackspaceキーの位置、かな入力の刻印など、日本人が慣れ親しんだ配列で、ガスケットマウントの打鍵感を楽しめるのは貴重と言えます。

そして、ロジクール製品らしくマルチOS対応のキートップの印字が施されています。Macユーザーも安心です。Mac対応・JIS配列・メカニカルキー・ガスケットマウントという稀有な条件が揃いました。他社製品にもガスケットマウントのキーボードの製品は存在しますが、JIS配列モデルは限られており、入手性が課題です。その点、実店舗で試せる点は、購入前に打鍵感を確かめたい人にとって安心材料になります。
コンパクトなのにテンキー搭載、という絶妙な設計
Alto Keys K98Mのもう一つの魅力は、テンキー搭載ながら横幅401mmに抑えたコンパクト設計です。これは矢印キーとテンキーの配置を工夫することで実現しています。

一般的なフルサイズキーボードは横幅440mm前後が標準ですが、Alto Keys K98Mはそれより約40mm短くなっています。デスク上でこの差は、マウス操作のスペースが広がり、書類やノートを広げる余裕も生まれます。数字入力が多い業務(データ入力、プログラミング、表計算など)では、テンキーは必須。テンキーレスモデルは確かにコンパクトではあるものの、別途テンキーを用意すると結局デスクスペースを圧迫します。Alto Keys K98Mはこれをうまく両立させています。
アクションキーとLogi Options+の連携
キーボード上部には、スクリーンショットキー、音量コントロールキーなど、実用的なショートカットキーが配置されています。そして、おなじみLogi Options+を併用すれば、最大12個のショートカットをカスタマイズ可能。マクロ登録機能「Smart Actions」と組み合わせれば、複雑な操作を一発で実行できます。

例えば、特定のアプリケーションを起動する、複数のファイルを一括で開く、定型文を入力するなど、業務効率を大きく向上させる使い方が可能です。単なる「良い打鍵感のキーボード」ではなく、実用性重視の設計思想が感じられます。
接続方式の柔軟性、BluetoothとLogi Bolt
Alto Keys K98MはBluetooth接続と、同梱のLogi Bolt USBレシーバー接続の両方に対応しています。これはけっこう重要なポイントです。
Bluetooth接続は、USBポートを消費しないメリットがあるものの、環境によっては接続が不安定になったり、遅延が発生することがあります。特に複数のBluetooth機器を使用している場合は、干渉が起きやすくなります。
Logi Bolt USBレシーバーは、独自の通信プロトコルで安定した接続を実現します。ゲーミングキーボードほどの低遅延は不要でも、仕事で使う上で「確実に動く」ことは重要と言えます。

また、「Easy-Switch」機能により、最大3台のデバイスを登録し、ボタン一つで切り替えが可能。デスクトップPC、ノートPC、タブレットなど、複数デバイスを使い分けるユーザーにとって便利な機能です。
ちなみに、Alto Keys K98Mに付属するLogi Bolt USBレシーバーはUSB-Aコネクタ、使わないときはキーボード底面に収納しておくことができます。
バッテリー性能と、充電しながらの使用
それからワイヤレスキーボードで重要なのはバッテリーの持ち。Alto Keys K98Mは、フル充電かつバックライトオフの状態で、最大1年間の連続使用が可能(キー入力200万回相当)とされています。バックライトを使用する場合は使用時間が短くなりますが、USB-C充電をしながら使用できるため、バッテリー切れの心配はしなくていいでしょう。

ロジクール製品に関しては、バッテリーの心配は不要と言ってもいいです。
環境への配慮:再生プラスチックの採用
グラファイトモデルには25%、オフホワイトモデルには19%の認定再生プラスチックが使用されています。持続可能性を重視するロジクールの企業姿勢が反映された製品です。キーボードは長期にわたって使用する製品であり、環境負荷を考慮した選択は今後ますます重要になるでしょう。性能と環境配慮を両立している点は、評価したいポイントです。


そして、バックライトはいいぞ
なお、この素材ゆえに、内部が見えます。電源が入ったときに内部LEDが透けて見えるのもそれゆえ。

また、白色バックライトは輝度調節が可能で、暗い環境でも視認性を確保できます。RGBバックライトではなく白色単色なのは、ビジネスシーンを意識した設計ということでしょう。派手すぎず、実用性重視の実装です。


つまり、バックライトはいいぞ。
Alto Keys K98Mの総評
2週間使用した結論として、Alto Keys K98Mは、JIS配列・テンキー搭載・ガスケット構造をこの価格で実現している点を考えれば、納得感のある価格です。
メカニカルキーボード市場では、2万円台、3万円台の製品も珍しくありません。その中で、ロジクールというメジャーブランドが、ガスケットマウント構造を採用し、JIS配列・テンキー搭載・アクションキー・複数デバイス対応を含めて、2万円以下で実現したのは驚きです。
特に以下のような人には強く推奨できます:
- JIS配列のガスケットマウントキーボードを探している人
- テンキーが必要だが、コンパクトなキーボードが欲しい人
- 複数デバイスを使い分けるビジネスパーソン
- Logi Options+でショートカットやマクロを活用したい人
- メカニカルキーボードに興味はあるが、高額すぎる製品には手が出ない人
一方、以下のような人には向かないかもしれません:
- 図書館やカフェなど、完全な静音性が必要な環境で使う人(静音キーボードを推奨)
- スイッチやキーキャップを自由にカスタマイズしたい人(ホットスワップ対応のキーボードを推奨)
- US配列にこだわりがある人
機能面や利用シーンなどメリット・デメリットはいろいろ考えられるものの、本製品が画期的だと思えるのは、キースイッチ交換(公式には不可)や、ガスケットマウント構造といった、ともすればマニア向けの仕様です。カスタムキーボードや高級キーボードでしか使えなかった仕様を、コンシューマー向け製品を多く手がけ、全国に広く販売網を持つロジクールが開発し、販売したということです。
この取り組みの意義は大きく、興味はあったけど手が出なかった層や、試用できる機会に恵まれなかった層に、使ってもらえるかもしれないし、ひいてはキーボード沼市場の拡大にも繋がってくるかもしれません。
まとめ:ロジクールの新たな挑戦
Alto Keys K98Mは、ロジクールがカスタムキーボード市場のトレンドを取り入れつつ、ビジネスユーザーに最適化した意欲作です。UniCushion ガスケットとMarble Switchによる打鍵感は、長時間のタイピングでも疲れにくく、心地よい使い勝手です。

JIS配列、テンキー搭載、アクションキー、複数接続対応など、実用性を重視した設計は、「仕事道具としてのキーボード」を求めるユーザーに刺さるはず。18,590円という価格は、一般的なキーボードとしてみれば高いものの、メカニカルキーボード市場では「やや高め」程度。ロジクールの2年保証、全国の家電量販店で購入可能な入手性を考えれば、十分に競争力のある価格設定と言えます。
ガスケットマウントの打鍵感を、JIS配列で、ビジネスシーンで使いたい、そんな欲張りな要望に応えるキーボードが、ついに登場しました。(特にMacユーザーならなおさら!)
