空気中の二酸化炭素を計測するCO₂モニター、どれを選べばいいの？？

コロナ禍で注目されているのが「CO₂濃度測定器」です。読んで字の如く、空気中の二酸化炭素（CO₂）濃度を測定する機器です。本記事では便宜上「CO₂モニター」と呼びます。

飲食店の店頭で見かけることがありますが、これは業界団体のガイドラインや自治体の助成金の対象になっているため。店内の換気の状況が分かりやすく指標化されています。

この根拠については、慶應義塾大学 有志研究チーム MARCOの提言を読むと分かりやすいです。

対象空間のCO2濃度を1,000 ppmに保つことにより感染症を予防する明確なエビデンスに基づいている わけではなく、どちらかと言うと、現行のビル管理法によるCO2の環境衛生管理基準1,000 ppmが守られ ていれば少なくとも「換気の悪い密閉空間」とは言えないだろう、というものです。

「感染症対策としてのCO2濃度の利用方法を提言」

つまり「絶対大丈夫じゃないけど、柔軟に対応しようね」という意味です。

このCO₂モニターは換気の状況が一目瞭然になるので、店舗用だけではなく、個人やオフィス向けにも活用することができます。ただ、Amazon等で調べてみても安いものから高いものまで様々……。妙に安い中国製の製品もあったり、どれを選べばいいか分かりません。

私自身も同じような状況に陥ったので、これを機にCO₂モニターの現状について調べてみました。（しばらく解説が続くので、製品まとめを見たい方は、目次から飛んでください）

安い製品＝粗悪な性能？二酸化炭素濃度測定器の選び方とは？

さて、このCO₂モニター、Amazon等でユーザーレビューを読んでみると、どの製品も高評価と呼べるものは少なく（サクラっぽいレビューは除いて……）、信頼性について判断できません。こういった現状に切り込んだのが電気通信大学です。

5,000円以下の製品はNG？電気通信大学の精度検証結果

電気通信大学が実施した検証では、CO₂に反応しない製品やCO₂濃度を疑似的に表示する製品が多く見られたようで、総じて5,000円以下の製品はNGだったようです。

全体の25％のセンサは低精度ながらもCO₂に反応しましたが、67％はCO₂に反応しませんでした。さらにこれら67%の無反応センサは全て消毒用アルコールに強く反応することがわかりました。すなわち、CO₂センサとうたいながら、CO₂濃度を疑似的に表示する測定器が市場に多く出回っている可能性があります。

【ニュースリリース】安価で粗悪なCO₂センサの見分け方 ～５千円以下の機種、大半が消毒用アルコールに強く反応～│電気通信大学

世間的にも注目されるニュースで、様々なメディアで取り上げられました。

経済産業省から出されたガイドライン

こういった経緯があってか2021年11月には、経済産業省及び産業用ガス検知警報器工業会からCO₂モニターを選定する際のガイドラインが策定されました。

経済産業省及び産業用ガス検知警報器工業会は、新型コロナウイルス感染症防止対策として「換気の悪い密閉空間」を改善することを目的に、換気が十分に行われているかどうかを確認するための方法として二酸化炭素濃度測定器が使用される場合において、測定器を選定する際に最低限要求される仕様等の基準を定めるガイドラインを策定しました。

二酸化炭素濃度測定器の選定等に関するガイドラインを策定しました （METI/経済産業省）

上記のガイドラインでは、CO₂モニターを選ぶ際に下記のことに注意するよう警告されています。

CO₂の検知原理が光学式であること

CO₂を検知する際の原理として幾つかの方法がありますが、その中でも「光学式」を推奨しています。主な光学式として下記の2つの方式が挙げられています。

• NDIR（Non Dispersive InfraRed）：非分散型赤外線吸収方式
• PAS（Photo Acoustic Spectroscopy）：光音響分光方式

これらに加えて、補正用機能を搭載していることが挙げられています。製品によって書き方が「補正」だったり、「校正」だったりしますが、同じ意味と考えていいようです。

具体的な動作確認方法

ガイドラインの中では、CO₂モニターの動作確認方法として、下記の方法が挙げられています。

• 屋外のCO₂を測定したときに、測定値が415ppm〜450ppm程度（外気の二酸化炭素濃度）に近いこと
• 呼気を吹きかけたら測定値が急上昇すること（呼気は二酸化炭素濃度が高い）
• アルコールを塗布した手（または布）を近づけても測定値が大きく変化しない

実際に購入した後でも、上記の方法を試してみるといいでしょう。

CO₂濃度によって引き起こされる影響

CO₂濃度の測定にあたって、真っ先に感染症対策に注目してしまいますが、本来的には「換気の重要性」です。室内のCO₂濃度は「ppm」で表されます。（ppm = 大気中の分子100万個中にある、対象物質の個数を表す単位）

この濃度が人体に及ぼす影響として、下記のような目安が示されています。

• 700ppm以上で軽い眠気
• 1,500ppm以上で健康に悪影響
• 2,000ppm以上で健康被害の限界
• 3,000ppm以上で重度のあえぎ

冒頭の慶應義塾大学のリリースにもあったように、一般的には1,000ppmで換気の必要があると言われています。

上手な換気の方法については、ダイキンのサイトで詳しく解説されています。参考にしてみてください。（ダイキンの製品を薦めているサイトではなく、一般的な「換気」について解説しています）

上手な換気の方法～住宅編～

ダイキンは空気・空調の専門家として、換気することによって、健康で快適な生活に役立つ情報をお伝えしていきます。

上手な換気の方法 | 空気とくらし | 空気で答えを出す会社 | ダイキン工業株式会社

以上のことを踏まえて、各社のCO₂モニターを選ぶ指標を見ていきましょう。

CO₂モニターを選ぶ指標とは？

今回、製品をまとめるにあたって、下記の点を指標としました。

• 検出原理　……　NDIR方式かPAS方式しか紹介していません
• CO₂検出範囲　……　目安として、外気の400ppmあたりから、後遺症または死に至るレベルの3,000ppm程度までカバーしてあれば一般利用には問題ないでしょう。
• CO₂精度　……　概ね同じような精度のものが多いです。
• 補正機能　……　自動・手動ともに、人間が気をつけなければいけません。
• アラーム機能　……　換気を促すためにアラームを使いたい方は、アラーム機能のある機器を選びましょう。
• CO₂以外の計測項目　……　温度・湿度が多いですが、中にはPM2.5を表示してくれる機器もあります。
• 通信対応　……　アプリやWebサービスと通信するための規格です。単体で使うなら気にしなくていいです。
• アプリ・Webサービス　……　自分が使おうとしている機器が対応しているか確認しましょう。
• 電源方式　……　USBで給電できるものが多いようです。デスクで使う場合はUSBが便利です。
• 製品公式サイト　……　自社サイトで詳細ページを持たない製品は紹介していません。選ぶ際の参考にしてみてください。

それでは、実際にどんな製品があるのか、見ていきましょう。

国内企業のCO₂モニターを集めてみました

経産省のガイドラインに沿って、NDIR方式かPAS方式／PA方式のセンサーを採用しているメーカーの製品を探しました。製品公式サイトで公開している多くが国内企業だったので、それに絞っています。

調べてみて分かったのは、日本国内でCO₂センサーを開発・販売している企業は主に4パターンに分かれるということ。

1. 計測器メーカー。もともとセンサーを使った計測機器を作っている流れでCO₂モニターを発売しています。
2. 医療機器メーカー。病院や保健所等に向けて開発しているものの延長にあるのでしょう。
3. IoT・PC周辺機器メーカー。ネットワークやアプリ等への対応、USB等の電源を使った製品など、得意な分野でCO₂センサー製品を開発・販売しています。
4. その他。海外製品等を自社ブランドで販売しています。

各企業それぞれに特色がありますので、じっくり選んでみてください。

株式会社ヒロ・コーポレーション（福岡県北九州市）

オリジナル商品の企画・輸入販売、国内仕入卸・販売・製造を行うヒロ・コーポレーションからは日本製をPRポイントとした製品が登場しています。

HCOM-JP003

4.3インチの大画面ディスプレイで、二酸化炭素濃度に気温・湿度だけでなく、HCHO（ホルムアルデヒド）やTVOC（総揮発性有機化合物）も表示します。日本で製造・通電テストまで行っているそうです。

検知原理（センサー）	NDIR方式
CO2検出範囲	400 〜 5,000ppm
CO2精度	記載なし
補正機能	自動補正（24時間サイクル）
アラーム機能	601ppm以上でアラーム
CO2以外の計測項目	温度、湿度、HCHO（ホルムアルデヒド）、TVOC（総揮発性有機化合物）
通信対応	なし
アプリ・Webサービス	なし
電源方式	USB（USB Type-C）5V、充電式バッテリー
製品公式サイト	日本製　NDIR式多機能型CO2濃度測定器　HCOM-JP003｜ヒロ・コーポレーション

株式会社ティアンドデイ（長野県松本市）

データロガー製品「おんどとり」シリーズを展開するティアンドデイからは、信頼性の高いCO₂モニターが発売されています。

CO2・温度・湿度データロガー TR-76Ui

記録したデータをUSB接続や赤外線通信（別売りの機器が必要）で転送ができます。電気通信大学の調査でも、比較用に使用されていたデータロガーです。つまり、信頼性は抜群ということです。ただし、業務用・研究用としての製品なので価格も高価です。

検知原理（センサー）	NDIR方式
CO2検出範囲	0 〜 9,999ppm
CO2精度	±50ppm+5%
補正機能	手動補正
アラーム機能	外部警報端子
CO2以外の計測項目	温度、湿度
通信対応	USB、シリアル、赤外線
アプリ・Webサービス	なし
電源方式	ACアダプタ、単3アルカリ乾電池×4本
製品公式サイト	データロガー おんどとりTR-76Ui製品ページ｜T&D-公式-

まとめ

こうして、各製品の情報を調べてみると、どこのメーカーも自社サイトに情報を記載していて、一定の信頼性がありました。

一方、Amazon等で安売りされている製品は、見た目のカラフルさや価格の安さを強調していて、詳細な情報を記載していない製品がほとんどでした（一応、調べてみました）。※Amazonの販売ページにも情報はありますが、あくまで参考程度。

安物買いの銭失いは、今も昔も変わりません。健康のためを思って買うわけですから、しっかり選んで買いましょう。